「にちようびの あさ、なにも することがなかったので、ひろしは あなを ほりはじめた」と書き出す絵本『あな』(福音館書店)。詩人の谷川俊太郎さんの作品で、イラストレーターの和田誠さんの絵があたたかい。まだ子どもが幼い頃、せがまれて何度も読み聞かせた思い出がある◆穴を掘る少年に、母親や友達が「なに やってるの?」と問いかけても、「あな ほってるのさ」「さあね」とはぐらかすばかり。ページをめくるたび、穴はどんどん深くなっていく◆同じ穴でも、こちらは「穴の開け方」が問題になっている。岩盤規制にドリルで立ち向かったと政府が胸を張る「加計(かけ)学園」の獣医学部新設問題である。「行政がゆがめられた」と訴えていた前川喜平前文科事務次官が、今度は国会で「背景に官邸の動きがあった」と証言した◆政府側は、総理のご意向文書を「発言した記憶はない」と否定し、参考人も「加計ありきは虚構」と口をそろえ、水掛け論に終わった。疑惑の核心である安倍晋三首相が不在のままでは、どうにもじれったい◆絵本で少年は完成した穴の底から空を見上げた後、すっかり元通りに埋め戻す。何も残らなくとも、少年の充実と成長が感じられ、余韻が心地良い。ぽっかりと空いた疑惑の穴の方は、さっさと埋め戻してなかったことに…、では通るまい。(史)

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