2011年に廃止された地方議員年金制度に代わる措置として、地方議会の半数以上に当たる少なくとも900議会が、議員の厚生年金加入を可能にする法整備を国に求める意見書を可決したことが15日、分かった。引退後の生活不安による「なり手不足」を訴えているが、政務活動費を巡る不正が相次ぐ中、実現には年に約200億円の公費負担が新たに必要で、議論を呼びそうだ。【共同】

 意見書を可決したのは佐賀を含む29道県議会と、8政令市を含む871市区町村議会。県内は佐賀、神埼、武雄市を除く7市と、有田町を除く9町。提出を受けた参院事務局や、各議長会が把握する議会数を共同通信が集計した。大阪市議会と神奈川県鎌倉市議会は「国民の理解が得られない」として反対の意見書を可決した。意見書は首相や衆参両院議長などに届けられるが、法的拘束力や回答義務はない。

 地方議員にはかつて、自身の掛け金と自治体の負担で運営する独自の年金制度があったが、「平成の大合併」などによる議員数の減少で積立金の収支が悪化。受給資格を得られる年数が短く、厚生年金と併せて受け取ることができるなど「特権的」との批判から、民主党政権下で廃止された。

 現状では、専業議員は公的年金では基礎年金の国民年金にしか加入できない。このため全国都道府県議会議長会が昨年7月、議員の専業化が進んでいる上、なり手不足が深刻化しているとして決議を可決。「サラリーマンの立候補、議員のサラリーマンへの復帰が行われやすいように、議員の年金制度を時代にふさわしいものとすることが人材確保につながる」と訴えた。

 総務省によると、廃止された地方議員年金の受給資格者への給付は今後約50年続き、廃止後の累計で1兆円超の公費が必要と推計される。厚生年金加入を可能にすれば保険料は自身と雇用者である自治体の折半となるため、これに加え年間約200億円の公費負担が生じる。

 ■議員の年金 国会議員と地方議員には自身の掛け金と国の負担、自治体の負担で運営する独自の年金制度がそれぞれあったが、国会議員年金は2006年に廃止。地方議員年金も11年に廃止された。受給資格は国会議員が10年、地方議員は12年の在職で得られ「特権的」との批判が強かった。選挙で選ばれる職でも、都道府県知事や市区町村長は常勤として扱われ、厚生年金に加入できる。

=解説= 容易でない国民の理解

 議員の厚生年金加入を要望する地方議会の意見書は、地方議員にも一般の公務員や会社員と同等の老後保障を求めるものだ。ただ、議員は一般より高い傾向の報酬に加え、議会によっては本会議の出席ごとに支給される手当もあり、政務活動費はずさんな使い方が次々に明らかになっている。議員と公費の関係に厳しい視線が向けられる中、国民の理解を得るのは容易ではない。

 意見書を採択した地方議会が既に全体の半数超にも達したのは、各議長会が先導して旗を振ったことが大きい。「数」をそろえ、法整備を担う政府や国会に圧力をかける狙いが透けて見える。

 虚偽の日帰り出張で政務活動費を着服し「号泣会見」後に辞職した兵庫県議に続き、昨年は政務活動費の不正使用で富山市議が13人辞職する騒動が起きた。インターネットで領収書を公開する議会は依然として少数にとどまるなど、透明化や適正使用の努力が尽くされたとは言い難い。

 人口減少や地方経済の低迷で自治体財政は厳しさを増している。「政治とカネ」を巡る諸問題の解決と財政健全化を放置し、わが身の将来の安定を優先すれば、政治不信を増幅しかねない。

=指揮者談話= まず制度改めよ

 高橋亮平・中央大特任准教授(元千葉県市川市議)の話 議員は日々の出勤義務がなく、常勤か、それに近い勤務が前提の厚生年金はなじまない。国民が受ける最低保障の基礎年金だけで生活できないというのなら、その制度自体を改める方向に動くのが筋ではないか。政治活動には資金が必要で、きちんと働いている議員は持ち出しが多いのも事実。実情に応じて報酬や政務活動費を引き上げるなど適正化が必要だ。それを自ら求めにくいため、一般会社員などと同じ制度で言い出しやすい厚生年金を求めているようにも見える。

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