■記念館来訪3割減、「価値の可視化」課題

 佐賀市の「三重津海軍所跡」は7月、世界文化遺産登録2周年を迎えた。隣接する佐野常民記念館の2016年度の来館者数は前年度比約3割減の約12万4千人だった。15年度は登録効果で急増したが、ひと段落して17年度も減少傾向が続いている。地下遺構の「見えない遺産」という史跡の性質上、市はデジタル技術やガイダンス施設の整備による「価値の可視化」に活路を模索している。史跡周辺でも、地域を盛り上げようとする動きが出てきた。

 16年度の来館者数は、前年度比31・2%減の12万4730人だった。月別でみると、来館者が最多だったのは、バルーンフェスタでにぎわう11月の1万3374人。次いで黄金週間がある5月の1万2755人。最も少なかったのは6月の7409人だった。

 2万人を超えた月が4回あった15年度と比べ、前年度を上回った月は12月と1月の2カ月だった。9、10月は半数以下に落ち込んだ。17年度の4~6月は2万5548人で、前年度同期比で11%減となっている。

 市三重津世界遺産課は「登録初年度がピークになるとしても、減少の抑制を図りたい」として県と連携して新たな展示や活用策を手探りしている。3月下旬には、県が約2千万円で館内にドーム型シアターを整備した。演出と時代考証のバランスを取ったCG映像を見せる施設で、約30人が同時に視聴できる。団体客の利用も想定した。

 史跡に特化した展示施設がないことから、市は佐野記念館の増床、改築を視野にガイダンス施設の整備を進める。昨年度はガイド研修も実施し、地元ボランティアによるガイド体制も強化する。三重津世界遺産課は「デジタルとアナログの両方を組み合わせて史跡の魅力を伝えたい」とする。

 史跡周辺には登録後にカフェと土産品店が出店した。カフェ店主の野中崇弘さんは昨年11月、地域の人たちも巻き込んで「早都栄(はやつえ)祭り」を開いた。手作り品の販売や音楽イベントを企画し、目標の1千人を超える1200人以上が訪れた。

 野中さんは「ここに人が集まるということが分かったのは大きい」と手応えを感じている。「出店時は世界遺産効果を少し期待していたが、そんなに甘くないのはすぐに分かった。今は、店や地域を訪れた人に世界遺産を紹介する気持ちです」。登録による波及効果が地域に広がりつつある。

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