安倍晋三首相の友人が理事長を務める岡山市の学校法人「加計学園」による獣医学部の新設計画を巡り、文部科学省が国家戦略特区を担当する内閣府から「総理のご意向」などをたびたび伝えられていたという。そうした経緯が記録された一連の文書を入手したとして、民進党が松野博一文科相に内容の確認を迫るなど追及を強めている。

 加計学園が運営する岡山理科大は特区に指定された愛媛県今治市で2018年4月の獣医学部開設を目指している。市は用地の無償譲渡を決めており先月、松野文科相が大学設置・学校法人審議会に認可を諮問した。ただ特区への応募が1校だけだった点などに疑問があるとして、野党は安倍首相と学園側の関係を繰り返しただしている。

 首相は「相談があったことや圧力をかけたことは一切ない」と答弁。問題の文書については菅義偉官房長官が内容を全面否定し「こんな意味不明のものについて、いちいち政府が答えることはない」と述べた。だが、それで済む話ではない。

 首相側とつながりのある学校法人が官僚たちの忖度(そんたく)により優遇されるという「森友学園問題」と同じ構図が見え隠れしている。文書の内容が事実なら、首相とその周辺の意向によって文科行政がゆがめられた可能性もあり、政府が事実関係の解明と説明責任に背を向けることは許されない。

 一連の文書は内閣府とのやりとりなどを文科省側で書き留めた形になっている。「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」と題された文書には「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」「官邸の最高レベルが言っていること」とある。

 「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」として「『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況にあり、これは総理のご意向だと聞いている」との記述もあった。加計学園の学部新設計画について内閣府が「早期開学」をせかせていたととれる。

 公文書の形式とは異なり、箇条書きに近いことなどから、菅官房長官ははなから「怪文書」と決めつけている。だが松野文科相が「平成31年4月の開学を目指した対応とすべきではないか」とした「大臣ご指示事項」が記載されていると民進党から指摘され、文科相はそれに類する話をした記憶があると答弁した。

 話にならないと片付けてしまうのは乱暴すぎるだろう。国家戦略特区制度は2014年4月に始まり、政府は今年1月に1校特例で獣医学部を新設する事業者を公募。募集期間はわずか8日間で加計学園だけが手を挙げ、事業計画はすぐ認定された。政府内には「獣医師数は不足していない」との慎重論もあったが、押し切られたという。

 加計学園の理事長は首相の数十年来の友人で、首相自身も国会で年に数回はゴルフや会食を重ねる間柄であることを認めている。だからこそ誤解を招かないよう、業者選定などの過程について説明を尽くさなければならないのに、政府には全くその気がないようだ。

 首相夫人の存在が焦点となった森友学園問題と同様に「安倍1強」といわれる中、疑惑を指摘されても否定し続ければ乗り切れるというおごりも見て取れる。政治不信を顧みようとしないその姿勢はあまりに危うい。(共同通信・堤秀司)

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