汽車は走る 煙をはいて…。満開の桜の下で女先生と12人の子どもたちが、長い縄で機関車となり駆け回る。みんなで歌いながらの印象的なこのシーンは、木下恵介監督の映画「二十四の瞳」(1954年)の中でも平和をかみしめる場面だ◆時代は昭和初期。澄み切った目の子どもたちが、やがて戦争の大きな渦に巻き込まれる姿を追っていく。島の分校に赴任した高峰秀子演じる先生と教え子の交流を描いて、何度見てもこみ上げるものがある。戦後日本における最大の反戦映画といわれる◆今また戦時の暮らしをとらえた映画が注目されている。佐賀市のシアターシエマで上映中のアニメ「この世界の片隅に」である。父親が白石町出身で、おととい来佐した片渕須直監督(56)の舞台あいさつを聞いた◆戦時下の広島・呉に嫁いだすずが、つつましくもたくましく生きる姿を描いた。「片隅に生き、すぐ隣にいるのがすずさん。今この瞬間にいるような普通の人の上に戦争が降ってきたことをもう一度とらえ直したい」との言葉が心に残る◆食べる、洗濯する、会話する-。市井の人々の日常を丹念に描く。戦争は容赦ないが、小さな楽しみを見つけ出す。人は無力であっても強い。共感の源泉はそこだろう。その時代に生きる女性の視点から撮った二つの映画が、想像力を喚起する。(章)

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