高齢ドライバーによる事故防止策を議論する警察庁の有識者会議=16日午後

登校中の小学生らが巻き込まれた事故現場周辺。手前は衝突した軽トラック=2016年10月、横浜市港南区

■免許取り上げ、地方では困難

 高齢ドライバーによる事故防止策を議論する警察庁の有識者会議が16日始まった。道交法改正で認知機能のチェックを厳格化し、運転免許の自主返納を促すなどの取り組みが進むが、公共交通網が整った都市部以外ではマイカーが「生活の足」という現実は変わらない。高齢化が進む中、代替手段の確保が大きな課題になっている。【共同】

 「どこをどう走ったか覚えていない」。横浜市で昨年10月、集団登校中の児童に軽トラックが突っ込み7人が死傷した事故。運転していた男(88)は前日から神奈川県内外を夜通し走り続けていたとみられている。捜査当局は認知症の疑いがあるとみて男を鑑定留置し、当時の精神状態を捜査中だ。

■国の支援不可欠

 ブレーキとアクセルの踏み違えなどによる事故の発生率は高齢者に多く、瞬時の判断力など認知能力の低下が大きな要因と考えられている。3月施行の改正道交法ではこれまで免許更新時に実施していた認知機能検査を、75歳以上の運転者が逆走や信号無視などの違反をした場合に臨時で実施することにしている。

 検査後に医師が「認知症」と診断すれば免許取り消しか停止になる。警察庁の試算では、改正法施行後は2015年の10倍以上の年間約5万人が医師の診断を受け、約1万5千人(15年は1472人)が免許取り消しや停止になる見通しだ。

 警察庁はこうした対策とともに免許の自主返納促進にも力を入れる。だが、返納率の地域差は大きく、15年は東京都が5・03%だったのに対し、三重県は1・22%、岐阜県が1・46%など低調だ。代替手段の整備が進まない地方では免許を取り上げれば高齢者を苦しめるだけになってしまう。

 人口の減少が続く中、地方の鉄道やバス路線の多くは採算が取れず、縮小や廃止の危機にさらされる。交通政策に詳しい貝山道博・東北文化学園大教授(都市・地域経済学)は「特に中山間部の移動手段確保は必須。公営バスや乗り合いタクシーの整備には予算が必要で、国の支援も重要だ」と指摘する。

■ハイテクに期待

 国土交通省は14年に改正した地域公共交通活性化再生法で、地域交通ネットワークの再編に取り組む事業者と自治体、住民を支援する仕組みを整備した。バス路線を効率化し、コストの低い小型バスや乗り合いタクシーで補うなどの計画を作れば、国が補助を手厚くする仕組みだ。

 急速に発達してきた自動運転技術を活用する構想にも期待が集まる。内閣府は、3月から沖縄県南城市で路線バスを自動運転で走行させる実験を開始。国交省も17年度から、「道の駅」と中山間地の集落の間で、自動運転車で住民や生活用品を運ぶ実験を始める。

 ただ、自動運転にはさまざまな課題があり、国交省が目指す20年度の実用化は不透明だ。

 各地で高齢者の重大事故が相次ぎ、危険防止の対策は急スピードで進む。こうした中、国立長寿医療研究センターの荒井由美子長寿政策科学研究部長は高齢者の尊厳にも配慮を求めている。「孫の送り迎えなど運転を生きがいにしている高齢者もいる。免許の返納がつらい決断になることを周囲が理解して、精神的にケアすることも重要だ」

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