政府は2017年度予算案を閣議決定した。「経済再生と財政健全化を両立する予算」と胸を張るが、はたして中身はどうだろうか。

 一般会計の歳出総額は過去最大の97兆4547億円。前年度から7300億円も増えており、5年連続で過去最大を更新した。国債(借金)の新規発行額こそ、前年度をかろうじて下回ったが、歳入全体の3分の1を占めており、依然として借金漬けの状態だ。

 これで「財政健全化」をうたうのは無理がないか。しかも、今回の予算編成には、見栄えだけを整えるからくりが目につく。

 例えば、歳入不足を補うために、外貨運用の剰余金2兆5千億円すべてを特別会計から一般会計に繰り入れている。これまでは一部を活用することはあっても、全額投入でしのぐようなやり方はしてこなかった。

 国債発行額にしても、前年度を下回る34兆円にとどめたと強調しているが、ここにもからくりがありそうだ。というのも、16年度予算を振り返ってみると、3度の補正予算を組んだ結果、トータルでは39兆円にまで膨らんでいる。つまり、国民の注目が集まりがちな当初予算では発行額を抑えておいて、後から補正予算で追加するという手を用いたわけだ。

 政府の財政規律のタガが緩んでいる背景には、デフレ脱却を掲げる日銀の「マイナス金利」政策があるのだろう。マイナス金利の下では、国は借金返済や利払いに充てる国債費が軽くなるからだ。

 だが、日本は世界でも例がない借金大国である。国と地方の借金の総額は1千兆円を超えた。歳入の3分の1を国債でまかなう“自転車操業”が、いずれ行き詰まるのは明らかだ。

 いかに歳出を抑えるかは喫緊の課題だ。財政を圧迫している最大の要因は、社会保障費である。今回の予算案では、医療や介護の窓口負担を引き上げて抑制したが、特定の層へ痛みを押しつけるだけでは踏み込みが足りない。

 急速な高齢化が進み、2025年には団塊の世代が75歳を迎える。この先、これまで以上に社会保障費はふくらむ。さらなるコスト増にどう立ち向かい、社会保障制度をどう立て直していくのか。その方向性が見えない以上、制度そのものへの不信が広がりかねない。その場しのぎではなく、国民の不安を払しょくする抜本的な改革を急ぐべきだ。

 歳入にしても、見通しが甘いと言わざるを得ない。ここにきて米国の次期大統領に就任するトランプ氏への期待感から株価は上昇し、為替は円安へと一気にふれた。このトランプ相場を前提に、来年度の税収は2兆円も増えると見込んでいるようだが、にわかに信じがたい。

 「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ氏の発言からは、自国の利益だけを追求する保護主義の色合いが見て取れる。このまま円安基調が続くかを含めて、この先も日本企業にとって追い風が続くとみるのは危ういのではないか。

 もはや、安倍政権が掲げた「基礎的財政収支を20年度に黒字化する」という目標は、風前のともしびだ。今回の予算案からは、財政規律への危機感を失ったアベノミクスの副作用ばかりが見えてくる。(古賀史生)

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