チャート図

 人口減少時代の「地方創生」の切り札として、観光産業、特に外国人を呼び込むインバウンド観光が脚光を浴びる。九州経済連合会の麻生泰会長は続投が決まった6月、外国人入国者数の目標を上方修正し、「観光産業と1次産業で数字を出していく」と語った。

 佐賀県内でも外国人観光客をターゲットにした取り組みが目立つ。最近の記事から拾うと「流鏑馬(やぶさめ)、競輪など体験型観光で外国人誘致」(武雄市)、「外国客誘致へ公衆無線LANサービス整備」(県観光連盟)、「外国人乗客向け指さし会話集作成」(県バス・タクシー協会)と、それぞれに知恵を絞る。

 県内を代表する観光地である唐津市では、茶室や茶庭を備えた旧大島邸の移築復元に続き、唐津城が来週末、リニューアルオープンする。和文化を吸引力として、観光客誘致への期待は高まる。

 ただ一方で、ソフト面の課題は多々残る。6月定例市議会では議員が唐津城や曳山(ひきやま)展示場、旧高取邸、旧大島邸、旧唐津銀行などの担当部署や指定管理者が分かれている現状を挙げ、「休館日もばらばらで、企画展も統一感がなく、連携できていない」と指摘した。

 唐津市に限ったことではないが、観光を地方創生の柱に据えるのであれば、全市、全庁を貫くトータルな観光戦略が必要だ。

 その具体的な推進組織が「DMO」である。最近、紙面でもよく見掛けるが、「目的地をマネジメント/マーケティングする組織」の略で、官民の幅広い連携によって観光地域づくりのかじ取りを担う。観光庁が提唱し、現在、地域DMOとして全国72件が登録されているが、佐賀県内はまだない。

 先日、唐津で講演した郭洋春・立教大経済学部教授は「観光産業はあらゆる産業を網羅する総合産業」と述べた。チャート図(郭教授作成)のように、観光客が増加すれば宿泊業や飲食業、小売業は当然、食材を提供する農林水産業、ホテル・宿泊施設を造る建設業など、さまざまな産業に波及する。DMOはまさにその核だ。

 唐津市では3年前、観光協会や農漁業、経済団体、運輸業界などによる「からつ観光協議会」が発足し、全議員による「観光地域づくり議員連盟」が下支えするフレームはできている。次は、明確なビジネスモデルを提示できる「唐津版DMO」へどう発展させていくかである。

 DMOは外国人をはじめとする観光客誘致だけが主眼ではない。地域の稼ぐ力を引き出すとともに、地域への誇りと愛着を醸成することを目的とする。県内でも嬉野市や上峰町などでDMO登録を目指す動きが出ている。地域の良さを見つめ直し、住民自らが豊かさを再確認する地域づくりにつなげていきたい。(吉木正彦)

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