若い頃、クリスマスイブに一晩、佐賀署の外勤パトカーに同乗し密着取材をしたことがある。1982(昭和57)年の歳末だった◆お巡りさんたちの奮闘ぶりと、師走の世相を切り取ろうというのが狙い。道端に日本刀男が立っていたり、怖い目にもあったが、繁華街で語ったベテランのパト係の一言が心に残っている。「人が少ないなあ。昔は三角帽をかぶってケーキを手にした人が浮かれていたものですよ」。それは昭和40年代の話だろうか◆戦後、クリスマスがブームになったのは、東京のデパート商戦の盛り上がりからだったとされる。NHK朝の連続ドラマ「べっぴんさん」でも、主人公の主婦たちが始めたベビーショップがデパートに支店を出し、クリスマスの目玉商品を考えるシーンがあったばかり。時代は昭和26年ごろだ◆同乗ルポには「イブは家庭で過ごす人が多くなった」と書いたが、昭和も遠くなりクリスマスの風景も様々(さまざま)になった。今年、調査会社のアンケートでは、5人に1人は「1人で過ごす」と回答。でも「1人は寂しい」ではなく「1人は楽しい」になっているという◆自分用に小さいツリーやケーキを買っていくらしい。1人で過ごすクリスマスを「クリぼっち」というが、自分へのご褒美として心が満たされればそれもいい。みんな頑張っているのだから。(章)

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