報道陣に対し、和解協議の内容を報告する馬奈木昭雄弁護団長(右)=長崎市の長崎地裁前

 国営諫早湾干拓事業の開門差し止め訴訟を巡る和解協議で17日、漁業者側の弁護団は100億円の基金案検討打ち切りを求め、基金案は事実上、破綻した。漁業者側は「佐賀県側が拒否したことで基金案は実行できない案と証明された。ほかの案を議論するべきだ」と訴え。営農者側を対象にした基金創設による開門案を提示し、長崎地裁の今後の訴訟指揮にくぎを刺した。

 「農業被害が出ないような開門の中身を話し合うことしか、和解はあり得ない。基金案が立ちゆかなくなり、ほかの案を議論することがそんなにおかしいことだろうか」。協議前に長崎県庁で会見を開いた漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は、開門を含めた和解案を示した上で力を込めた。

 地裁が各団体に基金案の受け入れの諾否を求めたことで、開門調査を求める姿勢で一致していた3県の漁業団体は割れた。国は「八つのうち6団体が賛成しており、可能性がないわけではない」と主張、さらに基金案の議論を要望した。漁業者弁護団は「そうなれば、佐賀が『うん』と言うまで説得させ続けることになる」と批判し、国の立場に立った訴訟指揮にならないようけん制した。

 漁業者側の原告で、和解協議に参加しているノリ養殖の大鋸武浩さん(46)=藤津郡太良町=は「今年も干拓排水門に近い佐賀県西南海域は赤潮被害が深刻で、単価も上級品の半値以下。こんな状況で県や漁協を説得するのは不可能だ」と強調した。

 地裁の和解勧告から1年がたち、協議は計12回を数える。馬奈木団長は「われわれは(開門しない前提とした)都合の悪い案も誠実に議論を尽くしてきた。和解協議を打ち切って判決を出すという選択肢はない」とし、漁業者側の提案も議論するよう訴えた。

 一方、営農者側は開門する前提の協議には応じない構え。山下俊夫弁護団長は、仮に開門を前提とした和解協議の話が出た場合は「その場で即座に断る」と言明しており、開門訴訟の行方はさらなる混迷を深めている。

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