欧州を含む20カ国以上にプレス機を輸出し、売上高の海外比率が5割を超える森鉄工。EPA大枠合意に期待も寄せる=鹿島市

 日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)で大枠合意に達し、佐賀県内でも影響が見込まれる。関税の撤廃や引き下げにより、関連企業の多い自動車や日本酒、茶の輸出で追い風となりそうだが、農林水産物が安く入ってくることに酪農や養豚業者からは懸念の声も上がる。県内の輸出関連業者、生産農家の反応を2回に分けて紹介する。

 「間違いなくチャンス」。トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」のシートを製造しているトヨタ紡織九州(神埼市)の担当者は声を弾ませる。

■コスト削減投資

 EUは日本車に課している10%の関税を発効後7年かけて下げ、8年目に撤廃する。レクサスの世界販売台数65万2千台(2015年)のうち、欧州向けは6万4千台と前年から20%伸びており、「関税撤廃は追い風。日本車は環境性能が高いだけに評価が高く、富裕層を中心に需要が伸びるだろう」と期待する。

 日欧間の価格競争を背景に、生産性を高める設備投資の活発化を見込むのはプレス機械製造の森鉄工(鹿島市)。森孝一社長は「EUにとって関税撤廃の影響は大きい。コスト削減を目的とした投資が増える」。発効後5年程度で欧州の自動車メーカー向けの輸出量が1割以上伸びるとみる。

■直接取引強化

 海外での日本食ブームを追い風に、輸出を増やしている日本酒メーカーも好機と受け止める。ドイツやフランス、オランダに出荷している天吹酒造(三養基郡みやき町)は、商社を通じた販売だけでなく、現地の飲食店との直接取引も強化する方針だ。

 全輸出量に占める欧州向けの割合は15%程度だが、見本市などを通してスペインやイタリアでも人気が高まっているといい、「直接取引でさらに手頃な価格になれば商機が広がる。手続きの煩雑さはあるが頑張りたい」と語る。

 「即時撤廃される関税は3・2%と他品目に比べて低いが、潜在的な需要がある」と話すのは、うれしの茶を約10年前から欧州に輸出している茶販売店「茶荘徳永」の徳永和久社長。例年は2件程度だった欧州からの視察が、今年は10件近くに増えているという。

 日本と異なる残留農薬規制が課題だが、「欧州仕様で試験栽培する茶園が増えており、取り組みが加速していくのでは」と期待を口にした。

■輸入材増に懸念

 関税を撤廃するのはEU向け全品目の約99%に上る一方、日本の輸入品目も90%を超える。日本が3・9%の関税を課している構造用集成材もその一つ。伊万里木材市場(伊万里市)の林雅文社長は「輸入材が増え、価格の引き下げにつながらなければいいが…」と先行きを懸念する。

 海外取引は為替変動の影響が大きく、小売業界では関税撤廃の効果は限定的との見方もある。ワインの関税は750ミリリットルで最大93円程度。フランス、イタリア産など300種以上を扱う佐賀玉屋は「価格はほとんど変わらず、消費は極端に増えないだろう」と冷静に受け止める。

 

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