「緊張するだろうけど、普段の力を出せるように頑張りたい」と意気込む大野原中男子卓球部=嬉野市の大野原小中学校

ラリーの練習をする大野原中の男子卓球部員。奥では後輩の大野原小の児童がクラブ活動で練習している

■小規模校、地域が支える練習環境

 嬉野市の小規模中学校の男子卓球部が佐賀県予選を勝ち抜き、全国大会に出場する。大野原小中学校の生徒で、部員は6人。全校生徒数自体が少なく、出場条件を満たす人数の確保に毎年のように悩まされているが、そろえば、小学生時代から県内外の大会で活躍してきた精鋭。学校や地域ぐるみで、逆境を強みに変えてきた歩みがある。

 ■補欠なし

 嬉野市の中心市街地から車で十数分、山道を登った先に大野原地区はある。山林の間を茶畑が埋める人口約250人の集落だ。

 大野原小中学校は9学年で32人が学ぶ。中学生は男女8人ずつの16人。部活動は男子が卓球、女子はソフトテニスだけで、卓球部は男子の大半が所属する。

 県代表として臨む第18回全国中学選抜卓球大会は26、27の両日、山形県で開かれる。練習は熱を帯び、休日はボールが台に跳ねる音が終日、体育館に響く。

 大会は1、2年生だけの新人戦で、団体戦は6人が必要になる。卓球部顧問の福山憲一教諭(39)は「県予選のときも直前に1人が捻挫してひやひやした。うちは補欠もいないから」。出場できなくなる恐れと常に隣り合わせだが、少人数が弱みとは限らない。

 ■下積み4年

 大野原で小学生が3年生のころから親しむクラブ活動は、中学と同様に卓球とソフトテニスしかない。このため、中学に進学した時点で既に、競技力に4年間の下積みがある。

 地理的なハンディキャップを払拭(ふっしょく)するように、校内外での他校との試合や練習も盛んだ。一目置かれる実力から、毎年3月に開く「大野原カップ」には県内外の強豪が集まる。

 市教委によると、大野原の部活動は40年ほど前まで、男子は9人制バレーボール、女子はソフトボールだった。それをさらに少人数でも出場できるように、卓球とソフトテニスに変えた。同校の教員だった杉崎士郎嬉野市教育長(72)は振り返る。「当時の大野原の子どもたちは、町内の他校との試合でさえ縮こまってしまっていたから、自信を持たせたかった」。今では女子のソフトテニス部も中体連で九州大会に出場する強豪に成長した。

 「卓球がなければ、地域の外に出る機会は限られていたと思う」。2年の卓球部員、宮嵜陽生さん(14)はこう話し、「強い人との試合が特に刺激になる」と交流を楽しみにしている。

 同じ学年の田中悠道さん(14)は、野球やサッカーができる学校をうらやましく思うときがあるものの、「生徒数が少ない分、体育館が広く使えるし、先生からも丁寧に見てもらえる」。指導や練習環境が恵まれていると感じている。

 大人たちの協力も心強さにつながっている。部活は保護者が迎えにくる条件で午後7時まで練習できる。地元の男性は多くがOBで、練習の補助や道具の差し入れもして支えている。

 田中さんの父親の耕助さん(38)も卓球部員だった。「団体で全国に行きたいという思いをみんなで抱いてきた」。地域の感慨や期待を胸に挑む大舞台は、大野原そのものの新たな軌跡になる。=エール ひと交差点= 

このエントリーをはてなブックマークに追加