九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)が福島第1原発事故の反省でつくられた国の新規制基準に合格した。再稼働に向けては佐賀県や玄海町の「地元同意」が次の大きなハードルとなるが、現在の避難計画が住民の不安に十分に応えているとは言い難い。事故が起きれば、広域的な被害が予想されるだけに、県で主体性を持って議論を深めたい。

 地元玄海町の動きは速かった。岸本英雄町長は審査合格前日の17日に山口祥義知事と面会し、2月中にも町議会を開き、再稼働同意を表明する考えを伝えた。それだけにとどまらず、県にも早い段階での同意を求めている。早期再稼働に向け、意識して流れをつくっているのだろうか。

 ただ、福島第1原発事故を目の当たりにした今、原発の是非は立地自治体だけで語れる問題ではない。共同通信社が昨年11月に実施した自治体アンケートでは、伊万里市、神埼市、嬉野市、吉野ケ里町の県内4市町の首長が「反対」「どちらかといえば反対」と慎重な意見を述べている。

 市内のほぼ全域が、避難計画が必要な原発30キロ圏に入る伊万里市の塚部芳和市長は「安心の面での担保は得られず、市民生活は不安がつきまとう」と言い切る。圏外でも、嬉野市の谷口太一郎市長が「福島の事故処理が済んでいない」と反対理由を話すように、原発への信頼が揺らぐ今、県内の意見を急いでとりまとめることができる空気でもない。

 山口知事は電力の安定供給などを理由に「再稼働はやむを得ない」と考えるが、首長たちに加え、県内各団体の関係者や大学研究者でつくる第三者委員会の意見を聞き、最終判断する考えだ。

 先行して再稼働した川内原発がある鹿児島県をみても分かるように、原発は一度動き出せば、選挙に表れた「民意」を背景に運転停止を求めても電力会社は応じない。最終判断すれば、後戻りできないという覚悟も必要だ。

 再稼働を巡っては、玄海町の岸本町長と伊万里市の塚部市長の発言が注目されてきた。しかし、避難計画が今後の焦点であると考えれば、玄海原発30キロ圏で人口が12万5千人と最も多い唐津市から、もっと問題提起があっていい。

 このうち4500人は原発事故が起きれば、即時避難が必要な5キロ圏に住み、その数は玄海町を超える。名護屋や呼子が含まれ、観光客の避難誘導も必要となる。5~15キロには七つの離島もある。全国のほかの原発立地地域と比べても、複雑な課題を抱えている自治体といえるだろう。

 唐津市は県や玄海町のような地元同意の対象ではない。しかし、九電と独自に安全協定を結び、「重要事象には意見を述べることができる」という条文を盛り込む。住民の安全確保のために何が足りないのかを積極的に提案し、“物言う”自治体となるべきだ。

 もちろん、30キロ圏外だからといって、安全が保証されるわけではない。佐賀市は玄海原発から直線距離50キロほどだが、同じような距離で、福島では飯舘村のように帰宅困難に指定された地区は少なくない。いったん事故が起きれば全県的な被害が起こりうる。

 安全安心は国任せにできない。今だからできる議論をしっかり積み上げたい。(日高勉)

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