彦山下宮・奉弊殿(ひこさんげぐう・ほうへいでん)。彦山山頂の上宮へは、この鳥居から登る。

■一帯は彦山信仰の深層部

 5日午後、脊振山地の東部で発生した帯状積乱雲が東に流れ、福岡県朝倉市、東峰村、添田町、大分県日田市に豪雨災害をもたらした。これら福岡県、大分県にまたがる一帯は彦山信仰の深層部である。

 山岳宗教である修験道の中心は「峰入り」と呼ばれる山中修業である。彦山の峰入りは彦山から西へ、東峰村の小石原、朝倉市の馬見山、古処(こしょ)山を経て太宰府市の宝満山に至る道と、添田、田川の峰々を経て北へ向かう道があり、朝倉市の黒川地区、東峰村の宝珠山(ほうしゃま)地区には「彦山権現別院」が存在する。これらの地域が今回、豪雨災害に見舞われた。

 山岳信仰の峰々の彦山、古処山、宝満山、脊振山は分水嶺である。彦山に降る雨は北に流れて玄界灘に、東と南と西の流れは「筑後川」となり有明海に注ぐ。

 地域を東西、あるいは南北に分断する分水嶺。そこに人は異界への入り口を見、災厄と僥倖(ぎょうこう)をもたらす神の存在を感じ、霊山に分け入り霊力を得ようとする。

 今年「国史跡」に指定される「彦山」。鳥栖歴史研究会では8月5日、「彦山と肥前」について講座を行い、9月10日に現地を探訪する。問い合わせは鳥栖市教育委員会へ。

 時に牙をむく天然自然、人々は雲のわく峰を拝む。

(高尾平良・鳥栖歴史研究会常任講師)

このエントリーをはてなブックマークに追加