きょうは二十四節気の一つ、「大寒」。一年で最も寒さが厳しいころとされる。「寒稽古」「寒晒(かんざらし)」「寒梅」「寒見舞」…。「寒」を冠した季語はいろいろあるが、「寒鮒(かんぶな)」も立派な冬の季題である◆きのうは鹿島市で伝統の「鮒市」が立った。生の鮒を買うだけでなく、鮒を昆布で巻いて煮た「鮒んこぐい」が手に入るのが楽しみだ。昨年は浜町の酒蔵通りまで出掛け買い求めた。骨まで軟らかく煮え、味噌(みそ)と水あめの甘辛い汁がしみており、懐かしい味が口いっぱいに広がった◆鮒を食べる習慣は各地にある。考古学者の森浩一さん(故人)は『食の体験文化史』に、室町時代には京都で鮒汁が流行した記録があると書いている。料理法はいくつかあり、醤油(しょうゆ)と砂糖で煮るのが一般的で、鮒んこぐいもこの応用だろう◆ある書によると、江戸期に、にぎりずしが登場するまで、鮒の昆布巻を冬の食べ物として江戸市中のすし屋で売っていたという。酢味噌で食べる刺し身もある。筆者の子どものころは祖父が捕ってきたものを醤油で食べていた。「鮒ずし」が名物なのは琵琶湖畔である◆<浜町の鮒市冬の風物詩鮒んこぐいの口に懐かし>。一昨年2月、佐賀新聞読者文芸欄に載った佐賀市の横尾信雄さんの一首。遠い田舎の記憶をしみじみと思い出すのである。後世に残したい郷土の味だ。(章)

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