フリーゲージトレインのイメージ

九州新幹線長崎ルート暫定開業のイメージ

■リレー式長期化へ

 九州新幹線長崎ルートに導入予定のフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)に関し、国土交通省は14日、2022年度の暫定開業に向けて開発していた先行車の導入が困難との見解を示した。25年度を目指していた量産車による全面開業も厳しくなった。走行試験の結果、車軸に摩耗が見つかり、年単位での対策が必要となったため。採算面に懸念を抱えるJR九州の意見を踏まえ、8月にも与党がFGT導入自体の可否を含めた政治判断をする。計画が根本から見直される可能性が出てきた。

■8月にも与党判断

 国交省は同日開いた専門家による技術評価委員会で、不具合対策や経済性を検証する営業路線での走行試験の結果を報告した。車軸の摩耗対策には「相当程度の効果がある」と述べ、時間をかければ解決できる可能性を強調、国交省の担当者は現時点で開発を断念する考えはないとした。

 一般的な新幹線の2.5~3倍とされた車両の維持管理コストは、部品の再利用で1.9~2.3倍にまで圧縮できる見込みとなったものの、JR九州が採算面から導入を判断するかどうか不透明だ。国交省は「現時点で他の削減アイデアはない」としている。

 国交省から報告を受けた与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチーム検討委員会の松山政司委員長は報道陣に、25日にJR九州、28日に佐賀、長崎両県から意見を聞き、8月中にもFGT導入の可否を含めた整備方針を決めたいとした。

 この日の技術評価委では、メッキを厚くするなどの対策を実施し、効果が確認されれば、実用化に向けた耐久走行試験に移行できることが了承された。ただ、年単位での対策が必要になるため、武雄温泉駅で在来線特急と新幹線を乗り継ぐ「リレー方式」が長引くことは避けられなくなった。

 リレー方式での暫定開業に欠かせないJR長崎線の大町-高橋間の複線化は予定通り進められるため、昨年3月の6者合意で決まった22年度の開業自体には影響がないことも確認された。

 FGTは14年の耐久走行試験で車軸の摩耗など不具合が見つかり、昨年12月から今年3月まで、検証走行試験で対策の有効性を確かめていた。

=解説= 計画遅れ、もう許されない

 国交省の担当者が「技術的にはあと一息のところまで来ている」と自負したフリーゲージトレイン(FGT)の不具合対策だが、状況は担当者が思うよりも深刻といっていい。

 車軸の摩耗は2014年の耐久走行試験時よりも100分の1に軽減し、昨秋に新幹線の2.5~3倍とされた製造・維持管理コストは1.9~2.3倍に圧縮できたと胸を張った。だが新たな摩耗対策の検証にどの程度時間がかかるか見通せず、2倍前後に縮減されたコストも収支にシビアな事業者目線から見れば及第点とは言いづらい。

 整備方針を決める与党の検討委は、JR九州と佐賀、長崎県の3者の意見を踏まえて方向性を決めるとしている。

 「フル規格待望論」が強い長崎県や事業者のJR九州からFGTに厳しい意見が出ることも予想される。まさにFGTの命運は土俵際にある。

 佐賀県は、関西圏直結による経済効果を期待して「苦渋の思い」で着工に同意した経緯がある。これ以上の計画のずれ込みと負担増は県民の理解を得られまい。「苦渋の思い」も踏まえた政治判断が導かれるよう県は手を尽くしたい。

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