白岩地区に整備された果樹試験栽培場で新たな果樹栽培に向けて話し合う組合メンバー=杵島郡白石町

 真新しい砂利道の先に、まだ雑草一つ生えていない畑が広がる。杵島郡白石町の白岩山中腹にできた果樹試験栽培場。「3月には、ここに新しい果樹の苗を植えるよ」。白岩地区のミカン農家下村弘己さん(69)が誇らしげに言った。

 約30アールの試験栽培場は、2019年の道の駅「しろいし」開業を見越して新設された。春には、レモンと夏ミカンを掛け合わせた新品種をはじめ、ブルーベリーやリンゴなど7、8品目の苗を植える。いずれも収穫まで数年かかるが、町は「ゆくゆくはタマネギやレンコンに続く新たな特産品に」と思い描く。

 町は9割を平野部が占め、コメやタマネギ、レンコンなど全国的に知られた農産物を生み出してきた。新規就農者が毎年30人前後いる県内自治体でトップクラスという点にも土壌の豊かさが表れている。

 平野部と比べ、山間部の事情は異なる。白岩地区は1948年に24世帯が入植して開墾、その後ミカン栽培に乗り出したが、産地間競争や生産者の減少、鳥獣害など環境の厳しさもあり、世帯数は17まで減った。

 昨夏、町から特産品開発の話を持ちかけられたのを機に、ミカン農家など7人で果樹試験組合を組織した。「会社勤めの息子たちが定年後もここで暮らしていくには、新しい何かが必要だった。先輩たちが開拓した土地をやすやすと荒らすわけにはいかん」と組合長の下村さん。メンバーは全員60代以上だが、新たな挑戦に意気込んでいる。

 道の駅の建設場所は、町の中心商店街から5キロ以上離れた福富地区の農村地帯。近くには数年以内に、有明海沿岸道路の福富インターが開通する。

 町は15年にまとめた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で、道の駅を「新たな人の流れをつくる起爆剤」と位置付けた。基幹産業の農業を核に地域経済を活性化させる手段として、交流人口増を狙う。19年度までに年間観光客数の目標を約10%増の31万5200人(道の駅来店を除く)と掲げ、情報発信や移住・定住促進といった手薄な分野へのてこ入れも目指す。

 ただ、農村地域が一変することに住民は不安も抱える。建設地近くの農家は「周辺の交通量が増えると、トラクターなどでは通りづらく、仕事はしにくい。建物や街灯の照明が作物の生育に影響する可能性もある」と吐露する。

 観光自体の課題もある。町商工会の関係者は「隣の鹿島などに比べると観光客を誘引するスポットが少なく、どうしても通過点」と分析。龍造寺隆信の居城跡など杵島山周辺の史跡群が観光資源とされているが知名度不足は否めず、「来た人にお金を落としてもらえる仕組みが必要」と指摘する。農業力を生かす新拠点を軸に、観光戦略の再構築が欠かせない。

=創生・再生 2017白石町長・町議選= 

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