広告最大手の電通は19日、経営体制の刷新を協議する臨時取締役会を開き、新入社員高橋まつりさん=当時(24)=の過労自殺問題で石井直社長(65)が正式に引責辞任し、後任に山本敏博常務執行役員(58)を充てる人事を決めた。【共同】

 現取締役の中本祥一副社長(66)と高田佳夫専務(61)は新たに代表権を持つ。電通が代表取締役を2人にするのは初めて。現時点では未定だが、山本氏は3月に開く株主総会で取締役に就く方向だ。経営安定のため中本氏と高田氏が山本氏をサポートする集団指導体制に事実上移行し、一連の不祥事で失墜した信頼の回復を急ぐ。

 山本氏ら3人は今月23日付で新たな役職に就く。

 山本氏は、最優先課題を「労働環境の改革」と指摘した上で「社員と共に改善施策を着実に遂行する」とのコメントを発表した。ただ、事件は会社と幹部1人が書類送検された後も捜査が継続中で、難しいかじ取りが予想される。

 山本氏はメディアや営業など幅広い部門を歴任した。昨年11月に発足した労働環境改革本部で矢継ぎ早に対策を打ち出すなど、指導力が社内で高く評価されていた。

 ■山本 敏博氏(やまもと・としひろ)慶大卒。81年電通。取締役執行役員を経て16年1月から常務執行役員。東京都出身。

《解説》 信頼回復へ危機感示す

 電通は19日、新入社員の過労自殺に端を発した難局に対応するため、新社長に山本敏博常務執行役員を選んだ。社長を引責辞任する石井直氏より7歳若い58歳。抜てき人事で信頼回復へ強い危機感を示したと言える。

 長時間労働を是としてきた日本の企業風土は女性の活躍も阻み、「保育園落ちた日本死ね」と待機児童問題を批判したブログは社会の共感を呼んだ。景気回復を加速するためにも、誰もが効率よく働ける環境の整備は待ったなしの状況だ。

 働き方改革の旗を振る政府は、電通の過労自殺問題を重視し、労働基準法違反事件として強い姿勢で臨んだ。

 山本氏はインターネット広告の不正問題で減俸処分を受けたが、高橋まつりさん=当時(24)=の自殺に端を発した労務問題では処分対象になっておらず、社内外の理解を得やすいと判断した。

 現取締役の中本祥一副社長や高田佳夫専務の昇格案も取りざたされたが、一連の不祥事への責任を重く見て、ともに代表権を持って山本氏を補佐することに落ち着いた。2人はそれぞれ経営管理部門と事業部門に精通している。

 電通は過重労働の是正に向け、業務量の適正化やキャリア開発支援といった具体策を検討しており、2月には全体像を示す方針だ。山本氏の手腕がさっそく問われる。

このエントリーをはてなブックマークに追加