昨日掲載された電通社員の母親の手記を読んで胸を痛めた人は多かったのではないか。入社1年目の高橋まつりさんが過酷な仕事に疲れ、自殺したのが昨年のクリスマス。イルミネーション輝く東京の街を、嘘であってほしいと願いながら警察に向かう母幸美さんの心中を想像すると切ない◆「まつりはずっと頑張った。夢に向かい努力した。期待に応えようと手を抜かなかった」。母の言葉に、「君の残業の20時間は会社にとって無駄」と追い詰めた上司は何を思うだろうか◆福岡勤務の頃、電通の社員数人と顔見知りになったが、誰もが明るく、仕事熱心の印象を受けた。おそらく高橋さんも取引先にそう思われていたと思う。そういう社員の頑張りに甘え、会社が無理を求める。そこに多くの企業に共通する長時間労働の問題点が隠れている◆弁護士やNPOなどが選ぶ今年の「ブラック企業」大賞に電通が選ばれた。上司のパワハラ的な発言も考慮すれば当然だ。付け加えれば、問題発覚後、社のトップが会見など公の場で一度も説明していない。そんな顔が見えないところが“ブラック”ではないのか◆電通は午後10時の一斉消灯を始め、帰社を促している。ただ、仕事を持ち帰る社員もいるという。高橋さんの最後の訴えを無駄にしないためにも見せかけの改革で終わってはならない。(日)

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