卒業、就職、進学が話題になる時期を迎えた。特に、何十年と会社に通い、年度末の今月31日をもって「定年退職」を迎える人たちにとっては感慨深いものがあるだろう。60歳、あるいは65歳の節目を迎え、次のステージをどう生きるのか。焦らず慌てず人生設計を考えたい。

 「定年」は何歳の企業が多いのだろうか。60歳定年制が義務づけられてからおよそ20年。現在は、生涯現役社会の実現へ向けた「高年齢者雇用安定法」の改正によって、希望者は65歳まで継続して働けるようになった。企業には「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を講じるように義務づけられている。

 佐賀労働局が昨年11月に公表した「高年齢者の雇用状況」をみてみよう。調査は、県内の従業員31人以上の企業1066社の状況をまとめた。このうち、定年制を廃止している企業は16社(全体の1・5%)あるが、ほとんどの企業で定年制があり、60歳を定年とする企業が857社と80・3%を占めている。また、65歳以上としている企業は156社(14・6%)となっている。

 つまり、大半の企業が60歳定年制を採用しており、定年後、多くの人が何らかの形で継続して雇用されているということになる。県内では、昨年5月までの1年間に1700人余が60歳定年を迎え、うち1500人近くが継続雇用されている。

 このように、「60歳定年=会社退職」という、かつての区切りはなくなっている。ただ、多くの先進国では定年となる60歳、あるいは65歳が「高齢者の始まり」とみなされている。日本人の平均寿命が男性で80歳近く、女性が85歳ほどと考えると、定年が60歳であれ、65歳であれ、「定年後の高齢者」として生きていく時間がいかに長いかが分かる。

 では、第二の人生をどう生きるのか。書店に並ぶハウツーものや、インターネット上の記事の中には人生設計を指南するものがあふれている。高齢期の3大不安は「健康」「お金」「孤独」とされ、経済的な課題への対処を挙げたものも多い。「定年退職時に3千万円ないと老後は破産する」と不安をあおるような記述もある。ことに、日本では「65歳以上」とされる「高齢者」の定義を「75歳以上」に見直す動きもあり、会社員らの厚生年金の支給開始がさらに引き上げられるのではないかという懸念も広がっている。

 こうした経済的な不安を抱えながらも、同時に関心が集まるのが「生き方」の問題だ。かつて農協が佐賀市富士町の集落を対象に実施したアンケートでは、シニアが望むのは「地域の暮らしの向上に貢献したい」という思いだった。日経BP社「定年男子定年女子」では、男性にとって最も深刻な問題は「孤独」だという指摘もある。どんな形でも、社会とのつながりのある生活は、「お金」以上に必要なことかもしれない。

 定年後の生きがいづくりのために、「何か始めなければ」「夫婦で趣味を持たなければ」と焦る気持ちもあるかもしれないが、ささやかな幸せを見つけようとする心を持ち、社会との適度なかかわりを保ちながら、焦らずに楽しい人生を探したい。(丸田康循)

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