携帯電話の機種変更に来た客に自社の電気プランを説明するスタッフ=佐賀市のauショップ西佐賀

 「九州電力より料金が安いことを訴えたいが、消費者にアプローチする手段は限られる。契約は頭打ちの状態」-。一般家庭で電気の購入先を選べるようにする電力小売り全面自由化で、佐賀県内もターゲットにしている福岡県の新規参入業者(新電力)は、厳しい現状をこう表現する。

 4月のスタート当初の不安が的中した格好だ。新電力への契約切り替えは、都市部では目立ってきているものの、地方では極端に伸び悩んでいる。

 九州で自由化対象となる契約数は620万件で、うち九電から新電力への切り替えは8月末時点で4万8千件。全体のわずか0・8%(県別の数字は未公表)で、その後も状況は大きく変わっていない。

 なぜ伸びないのか。一つはマーケットとしての魅力のなさ。ある事業者は「家庭向けは電気消費量の多い企業向けに比べると利幅が薄い。数がとれなければ厳しく、事業者はおのずと人口の多い首都圏や関西に集中する」と明かす。

 経済産業省電力・ガス取引監視等委員会によると、新電力は370社あるが、九州で営業しているのは30社程度。佐賀県内の企業は一つも参入していない。

 九州ならではの事情もある。原子力発電所を持つ九電は、火力など他電源が主体の他社より優位に立つ。玄海原発(東松浦郡玄海町)再稼働後の料金値下げも警戒し、参入を見送った事業者は「九電の料金はもともと全国で2番目に安い。簡単には対抗できない」と、顧客獲得の難しさを指摘する。

 国は新電力に対し、福島第1原発事故の賠償費用を負担させる方向で検討している。太陽光や火力発電中心の電気を販売している事業者は「原発依存を減らしたいと、選んでくれた客もいる。どう説明すればいいのか…」と困惑する。

 厳しい中で善戦しているのは、既存の店舗や顧客を抱える通信やガス事業者などだ。KDDI(au)は、携帯電話の買い換えに訪れる客に、ポイントがたまり値引きと同じ効果がある自社の電気プランを売り込んでいる。佐賀市の店舗マネジャーは「時間を掛けて説明すれば、メリットを感じてもらえる」と、来年以降の切り替え拡大に期待を寄せる。

=ズーム= 電力小売り全面自由化

 電気料金の引き下げやサービス向上を目的に、8兆円規模とされる家庭向け市場を開放。全国で370社の電気販売事業者が新規参入している。どの事業者から電気を購入しても新たに電線を引く必要はなく、電気の品質も変わらない。

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