米国で最も偉大な大統領は南北戦争を勝ち抜き、奴隷解放に道筋をつけた第16代リンカーンといわれている。その彼も就任式で「我々は敵同士ではなく味方だ。感情が高ぶっても親愛の絆を切るべきではない」と内戦回避への悲壮なまでの思いを訴えている。第二次世界大戦よりも多い60万人超の死者を出したのはなんという皮肉か◆以来、米国の政治家は国内の亀裂に敏感だが、45人目の新大統領は無頓着のようだ。差別的な言動も選挙時のまま。就任直前の支持率が歴代最低の40%台にとどまるのも「メディアのでっちあげ」と意に介さない◆政治の表舞台は初めてで、就任演説で「権力を政党間で移行するのではなく、国民に返還する」と言い切ったのは評価できるが、思い込みが怖い。就任初日から大統領令を出し、前任者が成し遂げた医療保険制度の撤廃を示したのは弱者救済と真逆だろう◆決め台詞(ぜりふ)「アメリカ・ファースト」をリンカーン風に言えば「米国民の、米国民による、米国民のための政治」か。ただ、自国の利益優先の行動が目に余れば、世界が混乱してしまう◆初代のワシントンは巨大な権力を自覚し、2期8年で惜しまれながら退いた。続く建国の父たちと築いた自由と民主主義の歴史は世界の手本でもある。トランプ氏が暴走する“キング”とならないことを願う。(日)

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