とあるハンバーガーショップ。主人公の中年男が叫ぶ。「あの写真を見ろ。ジューシーで肉がふっくらしてて、とてもうまそうだ。なのに、これはペチャンコで、肉の量も全然違う」。名優マイケル・ダグラスが“キレる”中年男を演じた映画「フォーリング・ダウン」の一場面である◆こちらの看板はどうだろう。「共謀罪」から看板を掛け替えた「テロ等準備罪」を新設する法案が衆院を通過した。英国でコンサート会場が狙われたばかりだ。テロを防ぐ、という理念そのものには誰もがもろ手を挙げて賛成するに違いない◆「テロ対策」と書き込んではあるが、これまで3度も廃案になった共謀罪と中身は変わらないようだ。政府は犯罪防止の国際条約を結ぶためと説明するが、国連の特別報告者が「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」と、わざわざ警告したとは穏やかでない◆相談して下見しただけでも罰するというから、かなりの劇薬だろう。「一般の人が対象になることはあり得ない」という説明を信じたいが、当の法務大臣の答弁はどうにもおぼつかない。世論調査も賛否は真っ二つに割れたままだ◆映画の主人公は、店内の客に「どう考えたってインチキだって思わないか」と問いかける。ハンバーガーならまだしも、法律が「看板に偽りあり」では困るのだ。(史)

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