佐賀平野はすっかり麦秋に染まり、雨あがりの新緑が眼に眩(まぶ)しい季節となった。川辺の柳や葦(あし)の若葉、そして栄の国の楠(くす)の青葉など、やさしい緑の色に瑞々(みずみず)しい「生命(いのち)」の芽生えを感じる。

 佐賀市諸富町の大堂神社。樹齢900年(推定)の立派な新緑の大楠。参道の方に傾いて趣のある風景をつくり出している。御手洗( みたらい )の手拭き布や鈴紐(すずひも)などの朱赤の色が緑の中にヴィヴィッド感を演出している。

 この神社は銅造明神鳥居で有名である。江戸時代初期、島原の乱に出陣した初代小城藩主鍋島元茂が戦勝祈願に寄進したもので、寛永17(1640)年の造立銘がある。歴史的にも鋳銅技術史的にも価値が高いという。静かな境内に影が伸びる。風が少し冷たくなってきた。

(佐賀女子短期大学名誉教授・山田直行)

このエントリーをはてなブックマークに追加