全国農業協同組合中央会(JA全中)の新会長にJA和歌山中央会の中家徹会長が内定、8月に正式就任することになった。JAグループは大規模な改革に取り組んでいるまっただ中。農業再生を目指して組織の先頭に立ち、実効性ある改革を成し遂げてほしい。

 一騎打ちとなった会長選を制した中家氏は政府主導の農業、農協改革に疑問を示し「おかしいものはおかしいと毅然(きぜん)とした態度で向き合っていく」と述べ、農協側の意向をより強く反映させていきたいとの考えを明らかにした。

 人口減、生産者の高齢化、割安な海外農産品の国内市場流入など日本農業を取り巻く環境は極めて厳しい。ここを乗り越え「攻めの農業」を目指しているときに、改革の後退は許されない。

 中家氏は会長選で、政府に比較的近い立場を表明していたライバルを大差で打ち破った。生産者の間に政府主導の改革への不満や不安がたまっていることは間違いない。中家氏に期待されているのはここを直視することだ。

 一連の農業、農協改革は環太平洋連携協定(TPP)交渉をにらみながら性急に進められた面もあるため、JAグループ内部の議論が十分反映されなかったとの指摘もある。さらに日本と欧州連合(EU)は経済連携協定(EPA)で大枠合意に達し2019年発効を目指すことになった。

 環境の変化に応じた柔軟な対応が必要になってくる可能性もある。中家氏は生産者の声を丹念に拾い集め、必要があるなら改革手法の見直しなどについて、政府と協議することにためらうべきではないだろう。

 ただ、改革の主眼は農家。さらに言えば、その先にいる国内外の消費者だ。そこははき違えてはならない。農業を活性化し、魅力ある産業にするためにはどうしたらいいのか。そのために農協は何ができるのかいま一度、原点に戻って考えてほしい。中家氏には地域の実情、世界の情勢を見極め、リーダーシップを発揮してもらいたい。

 日本農業は生産者の高齢化が進み、耕作放棄地が拡大するなど衰退から抜け出せない状況が続いてきた。国内市場に見切りをつけたメーカーなどが自力で海外に打って出る中で、農業は、政権与党の後押しもあり、痛みを伴う改革が骨抜きにされ、公金投入が厳しい検証もなく続けられた面も否めない。

 そこには産業としての競争力の問題のほかに、食料安全保障論や国土保全、景観維持などの観点からの議論もあったが結果として、今日の停滞を招いてしまった。

 JA全中は19年9月までに農協法に基づく特別認可法人から一般社団法人に移行、農協に対する監査が廃止される。18年産米からはコメの生産調整(減反)が廃止される。JAグループ内で商社機能を担う全国農業協同組合連合会(JA全農)も、物流で卸を介さない直接販売の強化などを打ち出した。先の国会では生産・流通コストの引き下げをねらう農業競争力強化支援法など農業改革関連の8法が成立した。

 こうした法整備、制度改革に実効性を持たせる環境整備が当面課題になる。中家氏は「農業の明るい展望を描けるように全力を傾注し、農家から必要とされる組織を目指す」と表明した。有言実行を求めたい。(高山一郎)

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