「先生、お母さんには心配をかけつづけで、申し訳なく思っていますので、先生からお母さんに、よろしく伝えてください」-。死期を悟った16歳の少女が、新米医師に告げた。うろたえた医師は「またよくなるのですよ。元気を出しなさい」と励ますが、そのまま息を引き取る◆この新米医師は、100歳を越えて現役を続けた日野原重明さん。著書『死をどう生きたか』(中央公論新社)につづっている。「『お母さんには、あなたの気持を充分に伝えてあげますよ』となぜいえなかったのか? そして私は脈をみるよりも、どうしてもっと彼女の手を握っていてあげなかったのか?」◆講演で全国を飛び回り、佐賀県内も度々訪れた。佐賀新聞社のメンバーズクラブ「Begin(ビギン)」の出演は99歳の時。「ビギン(始める)は大好き。長寿にもつながる」とユーモアたっぷりで、1時間40分立ちっぱなしだった◆満員の会場に「寿命は運命ではなく、生き方によって変わる」と語りかけていた。「成人病」の呼び方を「生活習慣病」に変えるよう提唱したのも日野原さん。暮らしを改めれば防げるというメッセージを込めたのだろう◆私たちは「人生100年時代」を迎えようとしている。存分に生きた日野原さんの105年の歩みは、後に続く私たちにとって道しるべであり続ける。(史)

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