大阪府豊中市の国有地払い下げ問題で、学校法人「森友学園」理事長の籠池(かごいけ)泰典氏が衆参両院の証人喚問を受けた。小学校建設地の借地契約について、首相夫人担当の職員が籠池氏の相談に応じており、「口利き」関与という新たな疑惑も浮上している。問題点は多岐にわたり、関係者の国会招致を求め真相を究明する必要がある。

 籠池氏は「昭恵夫人が名誉校長に就任したことで社会的な信用が得られた」と語った。この日の証言が正しいものであるなら、学園と首相夫人との結びつきは想像以上に強いというべきか。

 籠池氏によると、首相夫人が名誉校長に就任してまもなく、建設地の借地を10年から50年に延長できないかなどと夫人の留守番電話に依頼を吹き込んだ。経産省から出向した夫人付きの職員が財務省に問い合わせ、2015年11月に同省の回答をファクスで学園に送っている。

 その文面を見ると「ご希望に沿えない」「昭恵夫人にも報告している」と書かれている一方で、工事費の立て替え払いについて「平成28年度での予算措置を行う方向で調整中」という言葉もある。

 民進党は「首相夫人が介在しており、口利きした恐れが出てきた」(蓮舫代表)と批判する。菅義偉官房長官は「ゼロ回答で、夫人は関与していない」と否定するが、安倍晋三首相は国有地問題で「私や妻が関与していれば、首相も議員も辞める」と国会で明言した。首相自身の説明を求めたい。

 籠池氏は、昭恵夫人が否定し続ける100万円の寄付について「講演前に夫人が人払いし、2人きりになったときに封筒入りで渡された」と話している。裏付ける物証はなく、真偽は定かでない。ただ、籠池氏が嘘をつけば偽証罪という背水の陣で語ったことを考えれば、夫人も公の場で説明する段階に来ているだろう。

 もちろん、問題の核心は8億円が引き下げられた国有地売却問題だ。地中のごみ撤去費用になぜこれだけの額が必要かなど疑問点は多い。ようやく当時の財務省理財局長と近畿財務局長を24日に参考人招致することが決まった。「資料を廃棄した」という後任局長のはぐらかした答弁で1カ月以上、国会を停滞させた責任は大きい。もうごまかしは許されない。

 証人喚問では、自民党議員が資金不足のまま、ずさんな計画で小学校建設を進めた学園側に問題があると指摘した。大阪府の私学審議会でもそのような指摘が出ており、確かにその通りだろう。

 ただ、経営に不安がある学校が開校し、子どもたちに迷惑がかからないように事前にチェックするのが行政の責任だ。「認可適当」と計画にゴーサインを出した大阪府の責任は大きい。

 証人喚問での籠池氏を見る限り、政治家や官僚たちを動かせるほどの力があるとは思えない。それでも、財務省や国交省、文科省、大阪府といった巨大行政機関が一斉に問題山積の学校法人のために動いている。

 当事者の一人、松井一郎大阪府知事は「首相夫人が名誉校長であり、財務省は学園に親切な対応をした」と政権の顔色をうかがう忖度(そんたく)の可能性を示唆している。巨大な権力が持つ不気味な影響力を解明しない限り、国民の納得がいく答えは得られない。(日高勉)

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