持ち主が分からない土地が全国で約410万ヘクタールに上り、総面積では九州を上回るとする独自の推計を民間の研究会がまとめた。所有者が不明なため公共事業が実施できないなど影響が出ており、戦略的な対応を政府には求めたい。

 所有者不明とは、不動産の登記簿に現在の所有者が記されず、調べても誰が持っているか直ちに判明しなかったり、分かっても所有者に連絡がつかなかったりすること。土地の20・3%が不明で、種類ごとでは林地が4分の1と最も多く、次が農地の18・5%、宅地の14%となっている。

 不明の理由は不動産の登記は任意で、その重要性が十分に認識されていないことが挙げられる。明治以降、人口が増加し土地の経済的な価値が高まっていた頃は、先祖伝来の土地を相続する意識は高かった。

 それが戦後、農山村を中心に働き手が都市に流出し、近年は人口も減少局面に入った。地価が下がり、利用価値も低下した山林や棚田などを引き継ごうという意識も薄れ、相続人を決めないまま放置したり、承継しても登記しなかったりする傾向が強まったと言える。

 この結果、自治体による固定資産税の徴収ができないだけではない。道路建設やまちの再開発、農地の集約化、森林の伐採、災害復旧などで、所有者を捜すのに膨大な時間や費用がかかる。事業の遅れや中止だけでなく、不明土地を避け計画を変更するケースも多い。

 今後、地方から都会に出ている不在地主らが代替わりの時期を迎える。このまま放置すれば所有者不明の土地が急増するという危機感を持ち、政府は早急に対策をまとめなければならない。

 まず考えられるのは、不動産登記の促進策だ。死亡届が市町村に出された際に、相続の登記をしてくださいと伝えることから始める。登記の義務付けも視野に入れるべきだが、罰則を科すか、登録免許税を減免するといった誘導策が有効かは慎重な検討が要るだろう。

 登録免許税や固定資産税といった登記や土地保有の税負担を理由に、相続したくない人もいる。こういった土地や所有者不明の土地を、所在する市町村や、法人格を取得した自治会などの地元組織の管理に移す制度の導入も提案したい。

 所有者の所在を早く探索するには、市町村が持つ固定資産税の情報が有効だ。登記はしていないが、税金を支払っている相続人もいるからだ。

 空き家対策特別措置法では、固定資産税の納税記録について空き家の所有者を特定するため使うことを認めている。所有者の探索でも同じ自治体の別の組織や、他の行政機関がこの記録を使えるように、法的な裏付けをつくる必要がある。

 一方、所有者が不明のままでも事業実施のためできることは多い。例えば、東日本大震災からの復興事業では土地の財産管理人を選任して進めており、都道府県知事は農地の利用権を設定できる。これらのノウハウを自治体と共有した上で、公共性、緊急度が高い事業については、時間をかけずに事業を実施できる制度の確立が待たれる。

 法務省の不動産登記のほか、土地の種類や利用目的によって農林水産省や林野庁、総務省などが土地情報を縦割りに持っている。これらを一元化し、利用しやすくすることも重要だ。(共同通信・諏訪雄三)

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