近代以降では最初の女性職業作家とされる。短い生涯に『たけくらべ』『にごりえ』などの名作を残した樋口一葉である。145年前の明治5年3月25日(旧暦)、役人の娘として東京で生まれ、24歳で肺結核のために夭折(ようせつ)している◆幼い頃は家計に困った様子はないが、15の年に長兄を結核でなくし、事業に失敗して失意の父が他界したのが17歳の時。父もおそらく長兄と同じ病だったと、病理史学者の立川昭二さんはみている(『病いの人間史』)。樋口家には、この病気にかかりやすい腺病質的なものがあったのだろうか◆暮らしは一転して苦しくなり、生計を助けるため小説を書くようになる。森鴎外が激賞し、死にとらわれる前に名声を得た一葉だったが、病魔には勝てなかった。かつて「亡国病」と恐れられた結核。今の時代でも過去の病気と侮れない◆2015年に世界で1040万人が発病、180万人が命を落とした。日本でも1日に50人の新しい患者が出て、5人が死亡している。佐賀県では15年に23人が亡くなった。持病を持つ高齢者が老化に伴い、栄養をとれなくなって結核を併発するケースが多い◆一葉も過労と貧しい食事がたたったとみられる。せきが2週間続けば要注意。きのうは「世界結核デー」だった。この機に罹患(りかん)の可能性を頭のどこかに留めておきたい。(章)

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