オープンから30年を迎えた「ロッジやまびこ」。福岡都市圏からも買い物客が訪れる=佐賀市三瀬村

 佐賀県内で「産直」ブームの火付け役となった佐賀市三瀬村の農産物直売所「ロッジやまびこ」が開設30年を迎えた。年間180種類の農産物をそろえ、固定ファンが多いものの、大型直売所との競合で売り上げが落ち、高齢化による生産農家の減少といった課題に直面する。自家製の甘酒を手掛けたり、会員制交流サイト(SNS)で情報発信をしたりして生き残り策を見いだそうと懸命だ。

 採れ立ての野菜を求めて朝からにぎわうロッジやまびこの店内。生産者の名前を表示した「安全安心」の商品が根強い人気を支える。無料提供の「トンネル水」を求め、福岡市南区から毎週訪れているという岩松勉さん(80)は「水も農作物も新鮮」と満足そうに話した。

 1984年、村内の農家女性ら約50人が「小遣い稼ぎ」のためテント二つを構え、余った農作物の販売を始めたのが開設のきっかけだ。3年後にログハウス風の店構えでオープン。前年に三瀬トンネルが開通し、「福岡市からの客も増えてにぎわった」と開業当時のメンバーは振り返る。

 安価で新鮮な野菜をはじめ、三瀬トンネル建設時に湧き出た「トンネル水」が人気を呼んだ。ピーク時の96年には売上高が年間1億円に達し、当初90人だった生産農家の会員数は191人に倍増した。

 村の温泉施設「やまびこの湯」の近くに2号店を開業。翌97年には直売所を運営する三瀬村地場産品振興部会が農村の高齢者活動で評価され、農林水産大臣賞も受賞した。

 2000年代に入ると、広い駐車場や多数の品目をそろえる道の駅の大型直売所が台頭した。ロッジやまびこの会員農家は高齢化が進んで品数が減少。村産品中心から、近隣の富士町など他地域から仕入れた農産物も並べるようになった。会員は約110人に減り、売り上げはピーク時の半分以下に落ち込んだ。

 振興部会副部長の川崎淳子さん(63)は「建物も老朽化し、来客数も減ってきている」と嘆く。ただ、トンネル水の人気は根強く、「手作りのみそなど、ここにしかないもので新たな客を取り込みたい」と意欲を見せる。

 県によると、県内の農産物直売所は15年11月時点で126カ所。11年度以降は集計から無人営業を除外しているため単純比較はできないが、20年前に比べて少なくとも40カ所以上増えた。

 それでも30年の歴史を持つ直売所は少なく、県農政企画課は「他店に比べて大規模とは言えないが、山間部ならではの商品を並べ、地域との関係を大事にしている印象がある。福岡市に近い立地条件も後押ししている」と分析する。

 振興部会の会員は「今が踏ん張り時」と口をそろえる。1月から地域おこし協力隊の田代大樹さん(34)も加わり、SNSを使って情報発信するなど新たな販路開拓へ奮闘している。

このエントリーをはてなブックマークに追加