細かな線を得意とする納富彩子さん。「やらなきゃと思いながら取り組んでこなかった大きな作品も手掛けていきたい」と語る=武雄市山内町

有田焼の伝統的な絵柄のほか、タンポポなど自然の草花をモチーフにした作品も多い

■“絵手間”かけ藍の世界

 天然の磁石を砕いて粘土にする有田焼。「他産地で使っている配合陶土の器が西洋紙としたら、有田焼は上質な和紙」。納富彩子さん(43)は絵付けの感覚をそう例える。素焼きの器に筆を入れると柔らかな線が生まれ、呉須の濃(だ)みもすーっと磁肌に染みこんでいく。「描く時の心地よさは格別」と笑みを浮かべた。

 “絵手間をかける”のが納富さんのこだわりだ。その一つが「線条染付」と呼んでいる緻密な技法。草花などの葉脈の一つ一つを極細な線だけで構成し、りんとした生命の美しさを吹き込む。ただ時間と気力、体力を要し、「なぜ、そこまでしなければいけないのかと自分で思う時もあるけど、『すごい』と感動してくれる人もいるので…」。ひたすら筆先に精神を集中させる。

 父は窯業技術センターのデザイン室長や窯業大学校の非常勤講師を務めた納富悟さん(70)。幼い頃から焼き物に近い環境にあったが、「職業として意識したことはなかった」。高校は商業科を選んだ。卒業する前、悟さんから一尺の大皿と柴田コレクションの図録を渡され、「自分の好きなものを描いてみろ」と課題を与えられた。基本的なことは悟さんに教えてもらっていたが、ほかは図録を参考に見よう見まねで絵付けした。

 「現在からすればもちろん下手だけど、全くの素人の作品としてはなかなかの出来で、父からもほめられた。そのままうまくのせられて、この世界に引き入れられた感じですね」

 卒業後、悟さんに筆や絵の具の使い方などの基礎を学んだほかは、全て独学で技術を身につけた。自宅に「彩(だ)む工房」を築窯。赤絵も手掛けるが、染付の奥行きの深さに引かれ、「釉薬(ゆうやく)の下にある深い藍の世界を表現したい」と話す。

 2013年に、伝統工芸士と同時に国家資格の一級技能士に合格。職業訓練指導員の資格を取得し、九谷焼技術研修所(石川県)では染付と濃みの指導も経験した。

 今、気に掛けているのは天草陶石の供給不足の課題だという。「有田焼の土は奇跡の素材。限られた貴重な資源だからこそ絵手間をかけないと失礼な気がする」。最高の素材に、最高の技術。手仕事に妥協はない。

 のうどみ・あやこ 1973年生まれ。高校卒業後、父の納富悟さんの指導と独学で技術を身につけ、自宅に「彩む工房」を開いた。2013年に伝統工芸士(下絵付け)認定。同年に一級技能士にも合格。武雄市山内町大野7913-3。電話0954(45)5437。

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