厚生労働省は26日、電通社員過労自殺を受けた緊急の長時間労働対策を発表した。法律違反を繰り返した企業名をより広く公表するため、過労死・過労自殺の労災認定と違法な長時間労働が複数の事業所で確認された場合などと対象を拡大する。サービス残業をなくすため、企業に社員の労働時間を正確に把握させる仕組みも導入する。ただ、企業名公表の条件は依然厳しく、改善の実効性は不透明だ。

 政府は働き方改革実現会議で対策を検討しており、残業時間の絶対的な上限設置や違反の罰則強化を求める声がある。政府方針は来年3月にまとまる予定だが、法改正には時間がかかるため、行政の裁量でできる対策を示し「過労死ゼロ」を目指す。今回の対策は来年1月以降、順次実施する。

 企業名公表は2015年に開始。月100時間超の違法な長時間労働が、従業員10人以上か、従業員の4分の1以上に確認された事業所が1年間に3カ所あった場合を対象としたが、これまでの適用は1件だった。

 対策では公表基準を月100時間超から80時間超に引き下げたほか、過労死・過労自殺を出した企業も対象に加えた。

 さらに(1)違法な長時間労働で過労死や過労自殺した人が、2カ所以上の事業所で出た(2)過労死・過労自殺の発生は1カ所でも、別の事業所で月100時間超の違法労働が従来通りの規模の従業員数で確認された-のいずれかの条件を満たした場合も、すぐに公表する。

 サービス残業をなくすため、自己申告と実際の労働時間がかけ離れている場合、企業側が実態調査するとのガイドラインも新設。「企業側の暗黙の指示で自己啓発をしていた時間」も労働時間とするよう求める。実際は会社で働いていたのに「自己啓発」などの理由で労働時間外と申告する例があるためだ。

 さらに企業が複数の事業所で法令に違反した場合、労働局が事業所ごとに是正指導する現行体制から、本社を指導できるよう監督を強める。

 企業名公表は複数の都道府県に事業所を持つ大企業が対象。メンタルヘルス対策も強化する。【共同】

 ■電通社員の過労自殺 東大卒業後の2015年4月、広告大手の電通に入社した高橋まつりさんが、同年12月に東京都内の社宅から飛び降り、24歳で亡くなった。高橋さんは亡くなる前、「本気で死んでしまいたい」「もう体も心もズタズタだ」といった思いをツイッターなどで発信していた。三田労働基準監督署は、長時間労働が原因として16年9月に労災認定。各地の労働局は、電通の本支社や主要子会社を立ち入り調査し、11月には本社と3支社を労働基準法違反容疑で家宅捜索した。安倍晋三首相は今月7日、国会の党首討論でこの過労自殺に関し「二度と繰り返してはならないという思いで、働き方改革を進める決意を新たにした」と述べた。

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