南スーダンに派遣していた国連平和維持活動(PKO)部隊の日報問題で稲田朋美防衛相が、陸上自衛隊が日報を保管していた事実を非公表にするとの隠蔽(いんぺい)方針を了承していたと複数の政府関係者が明らかにした。

 稲田氏はその方針の決定後に国会の質疑で、日報保管についての報告はなかったとした上で「防衛省・自衛隊に改めるべき隠蔽体質があれば、私の責任で改善していきたい」と答弁していた。

 稲田氏は隠蔽の了承を否定しているが、国会で虚偽の答弁をしていた可能性があり、責任は極めて重大だ。防衛相自身の関与は文民統制が機能していたのか深刻な疑義も生じさせる。国会での真相解明を求めたい。

 PKOの日報問題では「廃棄済み」としたデータが保管されていることが判明するなど説明が二転三転してきた。不都合な事実を隠そうとする組織的な隠蔽体質が露呈したと言えよう。

 安倍政権は学校法人「森友学園」への国有地格安払い下げ問題や、加計(かけ)学園の獣医学部新設計画を巡る優遇疑惑などでも情報の積極的な公表を拒んできた。公正な行政の執行には、国民がその適否を判断できる情報の開示が不可欠だ。

 共同通信社が15、16両日に実施した全国電話世論調査で、内閣支持率は6月調査より9・1ポイント減の35・8%と2012年の第2次政権発足後最低に下落。不支持の理由として「首相が信頼できない」との回答が51・6%に上った。情報を隠し、説明責任を果たそうとしない政権の姿勢が一因だろう。情報隠蔽が政権の信用を失墜させている現実を安倍晋三首相は厳しく受け止めるべきだ。

 稲田氏は東京都議選の自民党候補の応援演説で「防衛省・自衛隊としてもお願いしたい」と発言するなど不適切な言動が相次ぎ、閣僚としての資質が問われている。8月に予定する内閣改造での「交代」では責任問題があいまいになる。改造前に辞任すべきだ。

 その前に、24日に実施される衆院予算委員会での集中審議に加え、衆院安全保障委の閉会中審査を早急に開き、真相究明を進める必要がある。

 PKO日報問題の本質は、現地の実態を隠そうとしてきた対応にある。陸自部隊が活動する南スーダンの首都ジュバで昨年7月に発生した政府軍と反政府勢力との大規模紛争に関して、日報は「戦闘」と記述していた。

 防衛省は昨年10月に受理した情報公開請求に対し「陸自で廃棄済み」として不開示を決定したが、統合幕僚監部に電子データで保管されていたことが判明。さらに陸自内部でも保管されていたが非公表としたことが、3月に明らかになった。

 一連の対応の背景には「戦闘」と認めれば紛争当事者間の停戦合意などのPKO参加5原則に抵触する恐れがあり、実態を隠す意図があったのではないかと指摘される。

 政府はこの間「武力衝突」という言葉を使い、稲田氏は国会で「法的な意味での『戦闘行為』ではない」「憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではない」と答弁した。自衛官の安全よりも、国内向けの説明を優先した発言と言えよう。

 一連の経過にはまだ不明確な点が多い。防衛監察本部が実施している特別防衛監察の結果を早急に発表するとともに、稲田氏の関与について国会できちんと説明すべきだ。(共同通信・川上高志)

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