90歳を過ぎても精力的に執筆を続ける作家佐藤愛子さんは30年前の恋愛小説で「忖度(そんたく)」を登場人物に語らせている。<優しさっていうのは喧嘩(けんか)しないとか、おとなしいというのとは違うのよ。相手の気持ちを忖度できるっていうのは優しさの第一条件でしょう>(『今どきの娘ども』)◆辞書で意味を調べれば「他人の気持ちを推し量る」。相手のことを思いやる優しさのこもった言葉だ。国有地の払い下げ問題をきっかけに、政治家によかれと思って、官僚が自分たちの判断で配慮することを「忖度」と呼ぶのだと国民に浸透しつつある◆政官業の癒着で迷惑を受けた言葉の一つだろう。「接待」もそうだ。本来は仏教用語で、行脚中の僧侶をもてなすために門前で湯茶を提供する無償の行為を意味する。今や見返りを求めた酒席やゴルフなどへの招待が思い浮かぶ◆ただ、国有地問題は本当に「忖度」なのか。あれだけ多くの役人が一斉に同じ方向に動き出したことを考えれば、影響力のある政治家が具体的に指示したように思えてならない。真相にはまだたどり着いていない◆「忖度」は国境を越えることもある。企業を名指しで批判し、経済制裁をちらつかす新大統領をなだめようと、首相が巨額投資を手土産に訪問した。米国政府への過剰な気遣いは友人同士での優しさとは言えない。(日)

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