今年の天候や農作物の出来について、「お粥試し」の結果を読み上げる東宮司=みやき町の千栗八幡宮

金鉢には箸が十字に渡され、肥前、肥後、筑前、筑後と国別に占う

お粥入りの金鉢は17日間、本殿の奥に安置され、祭り当日の朝に取り出される

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■当たるも、当たらぬも…

 未来を知りたい、という願望は太古から人類の心をとらえてきた。カメの甲羅やシカの骨などを焼き、亀裂の入り具合で吉凶を見たのがその始まり。やがて、ひび割れの形から生まれた文字が「占」なのだとか。

 「これを見て、平成17年を思い出しました。そっくりです」。3月15日、みやき町の千栗八幡宮で開かれた「お粥試し」。カビの生えたお粥を前に、今年の占い結果を読み上げる東正弘宮司は、こんな一言を漏らした。

 平成17(2005)年といえば、この伝統行事がにわかに話題を集めた年。地震「大いに見ゆ」との占いが出た5日後、福岡県西方沖地震が発生。天災をピタリと〝予言〟したからだ。

 その時と、粥の状態がそっくりだとは…。

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 粥占いは小正月の行事として、竹やアシの筒を入れて粥を炊き、中に入った米粒の量で占う「筒粥」が知られているが、九州、ことに筑後川の沿岸地域では、カビの生え具合を見るのが一般的。一年の豊作を祈願する「祈年祭」に合わせ、毎年3月15日に行われている。

 千栗八幡宮では、粥を炊くのは2月26日朝。地元で取れた献米3升(約4・5㌔)を1粒ずつ厳選し、全粒、半砕き、粉状の三つの状態にして、水1斗(約18㍑)で2~3時間かけて炊き上げる。それを直径30㌢ほどの金鉢に盛り、素焼きの土器をかぶせて本殿奥に17日間安置する習わしだ。

 さて、地震の年とそっくりだという今年の粥。占うのは前日の14日。「試し人」と呼ばれる専門家が青、赤、黒、黄といったカビの濃淡や広がりを見て、日照や風雨をはじめ、米麦や大豆のでき、火災や事故の恐れを判断していく。

 「大事なのは見た目だけでなく、自分のインスピレーション」と語るのは、祖父から3代にわたって「試し人」を務める福岡県みやま市瀬高町の小川大和さん(45)。占いは、はかま姿の正装で、マスクや虫眼鏡も必需品。「当たるとか外れるとかではなく、神様の意思を伝えるのが務めですから」

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 今年は粥の表面がほぼ真っ白。見立てはやはり、地震「大いに見ゆ」。熊本をはじめ地震が相次ぐこのごろである。それでも、全般的には穏やかな一年になりそうだという。

 占いはもともと、「神の意向をうかがう」行為だった。「それが時代とともに、人間の願望が強くなって、自分本位に解釈してはいないか」と東宮司。「神」が「自然の摂理」だとすれば、現代人には耳の痛い苦言である。1200年以上の歴史を持つという原初的な占いは、人と自然の向き合い方を問い掛けているようでもある。

【余録】千栗八幡宮

 千栗八幡宮は724(神亀元)年の創建とされる。この地域は鳥栖市と久留米市に接し、筑後川をはさんで、古くから肥前と筑後をつなぐ交通の要衝だった。粥試しでは、粥を盛った金鉢に箸を十字に渡すのだが、これは肥前、肥後、筑前、筑後を方位で国分けして占うため。かつては9カ国、つまり九州全域を占っていたというから、神社の格式の高さがうかがえる。

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