KUMO

 東京でミュージックビデオを制作するデザイン事務所に入り、撮影現場に足を踏み入れた。映像に関心が高まり絵のことを忘れるほど熱中したが、緊迫した現場で大勢いるスタッフをまとめ、次々と明確な指示を出していく監督を見て自分には無理だと感じた。自信のある分野を伸ばして音楽に関わろうと、デザインの仕事に専念した。

 2年ほど過ぎ、仕事に慣れたころ。引っ越しで家の整理をしていると、古い作品データが見つかった。東京のクリエイターに囲まれ、質の高い作品を見て過ごした自分の目には、過去の絵がひどく下手に映った。

 「今ならもっといい物が作れる」。上京前にクリエイターとして活動した時の名前「わたし、ぼく、おれ」を縮め「wataboku」と名乗り、再び絵を描き始めた。

 描きたい題材を考える時、中学・高校時代に仲のよかった女友達を思い返した。あまり感情表現しないツンケンした子で、その雰囲気をもとに白シャツを着たショートヘアで冷たい表情を浮かべる女の子を描いた「KUMO(くも)」を完成させた。清潔感があって、無意味なようにも謎めいたようにも見え、自分が無意識に求めていた表現が集約されている気がした。以降、制服の女子高生をシリーズで描き続け、フェイスブックやツイッターなどのSNSに投稿した。「感染」「それでも世界は何も変わってなかった」などのオリジナル作品やモデル、アーティストを描いた作品を発表すると、SNSへの反応を示す通知でスマートフォンが鳴りっぱなしになるほど大きな反響があった。

 現在もツイッター(@wataboku_)やインスタグラム(wataboku_)、フェイスブックなどのSNSに投稿し、インスタグラムのフォロワーは3万8000人を超える。

1.Visitor.009 wataboku(デジタルアーティスト)

2.絵のルーツ 漫画家だった父

4.絵に込めた“記号”

5.クリエイターを目指すみなさんへ

watabokuさん メイキング動画

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