今年も残すところあとわずか。先日、佐賀市星空学習館であった屠蘇(とそ)作り教室に参加して、香り豊かな8種類の薬草を調合し屠蘇散を完成させた◆先生は、佐賀の名薬「野中烏犀圓(のなかうさいえん)」で知られるウサイエン製薬社長、野中源一郎さん(71)。野中家に伝わる処方で、白朮(びゃくじゅつ)、桂皮(けいひ)、桔梗(ききょう)、山椒(さんしょう)などをブレンドした。「お屠蘇は匂いが命」と野中さんが言うように、砕いたばかりの生薬のさわやかな香りをかぐと、いかにも体が喜びそうだ。これを酒に浸せば縁起物の「お屠蘇」になる◆「蘇」という悪鬼を屠(ほふ)るという説や、悪鬼を屠り魂を蘇生させるという説などがあるが、いずれにしても邪気を払うという意味がある。なにしろ丁子(ちょうじ)という殺菌作用を持つ生薬も入っている。その力を借りて己の心に巣くう憎しみやひがみ、ねたみなどを洗い流し、社会の浄化もと希求する◆今年、この国では相模原市で障害者19人が刺殺されるという悲しい事件があった。海外に目を転じれば、ポピュリズム(大衆迎合主義)の広がりやテロの脅威にさらされた。現代の鬼っ子といえば、核兵器だろう。米国の次期大統領トランプ氏とロシアのプーチン大統領が、ともに核戦力強化を表明するなど世界は混迷の渦に巻き込まれそうである◆邪気、邪念を払い、来年が佳(よ)い年にと願う。屠蘇準備に思うことである。(章)

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