「そこにはブルーしかない。私の体は重い水の塊にのしかかられ、しだいにまわりのブルーに溶けていくようだった」(『イルカと、海へ還る日』講談社)。映画「グラン・ブルー」は、唐津の海を愛したことでも知られるフランス人ダイバー、ジャック・マイヨール(1927-2001年)をモデルに、素潜りを競う若者たちを描く◆舞台になったイタリア・シチリア島の街タオルミナの海は、どこまでも深い青をたたえている。そのタオルミナで、きょうから先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が始まる◆1年前の伊勢志摩サミットは安全保障分野でG7の存在感を印象づけたが、今回は一枚岩とはいきそうもない。4カ国の首脳が代わり、顔ぶれはすっかり様変わりした。もちろん、今年の主役は米国のトランプ大統領である◆「米国第一」を掲げ、各国に排外主義が広がるきっかけともなった。外交でも「取引」という言葉を好んで使うトランプ氏だ。損得勘定を自らの行動基準に据えているだけに、どんな要求を突きつけられるか、各国首脳も戦々恐々だろう◆唐津を訪れたジャックは高校生に語った。「欲望に満ちている人間と比べ、イルカはすべてを楽しんで生きている」と。イルカのような友好を望みたいが、トランプ氏を迎えるタオルミナの海には高波の予感が漂う。(史)

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