田代高規さん

 東日本大震災の翌年、「全村避難」となった福島県葛尾(かつらお)村の子どもたちを佐賀に招くプロジェクトを立ち上げた。当時は神埼小学校の校長。それ以降、葛尾小の児童が毎年訪ねてきた。

 「子どもたちが外遊びできず、喜怒哀楽が激しくなったり、食欲が減ったりしている状況を講演会やニュースで知ってショックを受けた。何とかしてあげたい、佐賀で目いっぱい走り回ってほしいと思いました」

 葛尾小は2018年度に従来の校舎が使えるようになる。しかし、避難先での定住が進み、児童数は減少、17年度の上級生は5年生の1人だけ。5年続いた訪問は昨秋で最後になった。

 「ふるさとを離れ、散り散りになるのはどれほどつらいだろう。神埼の子どもたちが葛尾小の校歌を披露した時に見せたうれしそうな顔が忘れられない。一緒に運動場で遊んだり給食を食べたり、勉強して共に過ごした時間はいつまでも記憶に残るんじゃないかな」

 現在は神埼市教育長。県外の教育現場では原発事故で避難した生徒へのいじめの問題が起きている。

 「少なくとも神埼の子どもたちは福島を身近に感じてくれた。事故からの復興は容易ではないが、逆行するようなことは起きないと思う。『困った時はお互いさま』という当たり前の感覚や周囲の友人、家族への優しさを大事にしたい」

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