佐賀で伝統野菜の代表選手といえば、多久市の女山(おんなやま)大根だろう。根が鮮やかな赤紫色に染まっているのが特徴だ。今が収穫の真っ最中で寒に当たり甘みが増す。先日、西多久公民館での催しに参加し、初めて郷土料理を味わった◆女山大根を使ったピンク色の「なます」や「ゼリー」、鯨の入った「かけ和(あ)い」など、地元の人の心がこもった手料理が胃袋を大満足させた。西多久町あたりを昔から女山というそうで、大根は八幡岳の南側の集落で江戸時代から作られてきた◆姿を消しかけていたが、復活したのは15年ほど前になる。地元の農産物直売所「幡船(ばんせん)の里」が1995年に開所したのを機に目玉になるものをと、県農業試験研究センターに種を持ち込み交配、選抜を繰り返して原種に近いものができた◆今は20戸ほどが栽培。青首と比べると甘みがあり、煮崩れしにくいのでおでんに向くといい、幡船の里ではネットでの引き合いで、東京のレストランにも送っている。多久に生まれ、今年が没後150年になる江戸後期の儒学者、草場佩川(はいせん)も大好物だったそうだ。「年々歳々、一人で幾畝(いくうね)分も食している」という内容の詩が残る◆江戸期には佐賀藩の殿様への貢ぎ物だったという歴史ある特産品。「生きた文化財」ともいえる伝統野菜を守ることが、地域の活気ある交流をつくり出す。(章)

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