認知症やその疑いのある行方不明者が4年連続で1万人を超えた。深刻な事態だ。昨年全国の警察に届けのあった人は1万5432人、佐賀県は51人だった。高齢化社会を迎えて不明者は今後、さらに増えると予想される。家族だけで対応するには限界がある。地域で見守る取り組みを充実させ、認知症の人が外出しても安心して暮らせる社会を目指したい。

 厚生労働省の調査では、認知症の人は全国で約462万人(2012年)と推計され、団塊世代が75歳以上となる25年には高齢者の約5人に1人、730万人が発症すると予測している。佐賀県内は約3万7千人(16年)と推計され、25年には約4万7千人と見込まれる。誰にとっても身近な病気になりつつある。

 国は15年、「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定した。「本人の意思を尊重し、できる限り住み慣れた地域で暮らせる社会の実現を目指す」とし、高齢者に優しい地域づくりや介護家族への支援も盛り込んでいる。

 一方、自治体などに認知症の人の一人歩きに対し「徘徊(はいかい)」という言葉を使うのをやめようという動きが広がっている。あてもなくさまよい歩き回るという意味の言葉が、誤解や偏見を招いているとの考えからだ。散歩や買い物、誰かと会うためなど、本人は目的を持って行動している。それを許した家族や施設は「閉じ込めておかなかった」と非難される。こうした現状を断ち、目指すべきは多くの人が認知症を理解し、本人の意思ができるだけ尊重され、安心して外出できる社会づくりだろう。

 そうした社会を支えるのが、「見守りネットワーク」の整備だ。住民と自治体、消防や警察などによるネットワークを組織しているのは、佐賀県内12市町(2月現在)。全市町での整備を急ぎたいが、組織ができればよいというものでもない。症状を理解し、適切な対応が取れるようにすることが大切だ。認知症と向き合う意識の底上げとネットワークづくりが両輪でなければならない。

 「認知症サポーター」制度は、認知症への正しい知識と理解で、一般の人に当事者や家族の手助けをしてもらおうという取り組みだ。基礎知識や接し方などを学ぶ1時間半ほどの養成講座を受ければ、サポーターになれる。何か義務を負うというものではなく、あくまでもできる範囲の手助けでよいとされる。県内には3月末現在で7万3752人がいる。

 武雄市内6校の中学2年生は、今年から養成講座を受講している。理解を促す教育が学校でも取り入れられ、若年層にも「分かってくれる人」が増えることは、安全・安心な地域づくりの強力な援軍だ。こうした動きがさらに広がることを期待したい。

 昨年51人だった県内の不明者だが、一昨年に比べ11人減っている。それが、見守りネットワークや認知症サポーターの効果によるものなのかは検証が必要だ。ただ、高齢者や認知症の人が増えても、捜索すべき人や行方不明者を最少に抑えることは可能だ。一人でも多くの人が症状を正しく理解し、よりきめ細かに見守りの目が行き届くことで、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりを実現したい。(田栗祐司)

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