「農家にとって意味がないことはできない、と言わなければならない」と国の農協改革の進め方を批判するJA佐賀中央会・新会長の金原壽秀氏=佐賀市栄町の佐賀県JA会館

■カット野菜に活路/EPA影響検証を

 JA佐賀中央会の新会長に就任した金原壽秀氏(67)に、生産者の所得向上に向けた取り組みや国の農業政策についての考えを聞いた。

 -農業に逆風が吹く中、中野前会長からバトンを受けた。まずは中央会会長としての抱負を。

 いかに佐賀農業を維持・発展させていくかに尽きる。農家や地域に貢献し、総合的に地域の力を生かしていくことが大切だ。

 -自身の生産者としての経歴を教えてほしい。

 農業研修学園(現・県農業大学校)を卒業し、農家の後継者として就農した。ハウスでキュウリから始め、花も栽培するようになった。佐賀の平たん地でできるコメ、麦、大豆の普通の農家でもあり、常勤役員になる前はタマネギを4ヘクタールくらい作っていた。

 -生産者の高齢化や担い手不足など農業を取り巻く環境は厳しい。

 確かに厳しいが、佐賀の平たん部は集落営農組織がつくられ、少しずつ法人化しつつある。作業を分担するなど負担を分散できる。今後は集落営農組織と大規模農家の二つに大きくシフトしていくだろう。中山間地への対策も必要だ。

 -農家の所得向上、生き残りに果たす農協の役割は。

 コメ、麦、大豆のみで法人化しても経営を成り立たせるのは難しい。生産振興、拡大にはJAとしての実需ニーズに対応した出口対策、すなわち販路の整備が必要だ。今、カット野菜の生産に取り組んでいる。例えばセブン-イレブンのカット野菜は、広島県以西は富士町の工場で全部作っている。フル稼働状態で第2工場も建設中だ。

 ただ、佐賀県産の野菜の割合はまだ少ない。集落営農組織は契約栽培にも向いているので、少しずつお願いしていく。売る側の声を肌で感じながら生産現場に落とし込み、収益をどう高められるかが課題になる。

 -2018年にはコメの減反政策が廃止される。

 基本的には国が関与する生産目標設定をやらないということ。供給量が増えれば値段が安くなるのは当たり前。農家が自らしっかり数量目標を守り、需給調整をするスタンスは変えてはならない。佐賀はしっかり守ってきたし、今後もやっていく。全国が同じレベルでやらないと効果はない。

 -欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が大枠合意した。

 TPP(環太平洋連携協定)も情報が入らなかったが、EPAはまったくといっていいほど情報が入らなかった。安倍政権の支持率回復のための場当たり的な対応ともとれる。

 -県内でも畜産や酪農に影響が出る懸念がある。

 EUは製品のブランド力が強い。質の高いものが安価で入ってくるのは非常に脅威だ。豚は、TPPの対策として出されていた「マルキン制度」(牛・豚肉の畜産農家の赤字を補填(ほてん)する)の拡充をやってもらわないと困る。県内の酪農家は既に40数戸に減っている。EUの加工品が入ってきて、北海道の加工乳が生乳として域外に流通すれば、佐賀の酪農が立ちゆかなくなり、県産牛乳がなくなるかもしれない。政府にはまずEPAの影響を検証し、対策を打ってもらいたい。

 -政府・与党の農協改革には、JAとして忸怩(じくじ)たる思いもあったと思う。

 政府の規制改革推進会議は農業を分かっている人がいない中で議論し、無理難題を押し付けてきている。極端に言えば、経済界がやりたいことを推進するために農協が邪魔なんだろう。JAは協同組合という自主組織であり、国による強制的な進め方は受け入れ難い。環境、時代の流れに合わせて自ら変わっていくのは当たり前で、今後も自主的な改革に取り組む。

 -15年の県知事選で農政協議会の存在が改めてクローズアップされた。今後の農政運動の展開は。

 前回の衆院選では、政権与党の中にわれわれの思いを伝えてくれる人を選ばないといけないという思いで自民党議員を推薦した。だが、ものの見事に裏切られた。これからも地域農業の実情を伝えるために国会議員にはいろんなお願いをしていくと思うが、対応できないのなら、ちゃんとわれわれの思いに応えてくれる人を選択しなきゃいけない時期だと思っている。

 -6月末まで組合長を務めたJAさがで不祥事が相次いだ。

 通常の監視体制では発見できなかった。役員の責任問題を含めて再発防止に努める。被害者には謝罪し、きちんと補償する。

 ■かなはら・としひで 県立農業研修学園(現・県農業大学校)卒業後に就農。JAさがでは2008年から理事、11年に常務理事、14年から代表理事組合長を1期務めた。JA佐賀中央会では14年に副会長となり、6月30日の通常総会で会長に就任した。杵島郡江北町。

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