国土交通省が公表した公示地価の全国平均が横ばいになり、リーマン・ショックが起きる前の2008年調査以来、9年ぶりに下落が止まった。

 公示地価は、地域の経済情勢を映し出す鏡である。前年からわずか0・022%の上昇とはいえ、上向いたとなれば明るいニュースに違いない。

 上昇した要因は、住宅地では住宅ローン減税や、日銀が導入したマイナス金利による低金利政策が追い風になり、住宅需要が堅調なのが大きい。商業地は、2020年の東京オリンピックに向けて外国人旅行者が増え続けており、ホテル不足が生じている都市部や、交通網が整備された地域で上昇している。

 日本経済に活気が戻りつつあると歓迎したいが、中身を細かく見ていくと手放しで喜ぶわけにはいかないようだ。

 一つ目の懸念は、この地価を支えているのがマイナス金利政策による資金の流入という点だ。実体がある需要があるならともかく、単に行き場を失った資金が投機的に流れ込んだだけではないだろうか。これはミニバブルではないか気がかりだ。

 住宅市場では早くも供給過剰が指摘され始めている。すでに賃貸物件などは、賃料の水準が下がったり、新しい物件でも空きが目立ったりするという。

 もう一つの懸念は、都市部と地方で、地価にばらつきが大きいという点である。

 全国平均は上昇に転じたとはいえ、いまだに調査地点の6割で下落が続いている。都市部の上昇が全国平均を引き上げている構図で、さらに格差が広がるのではないだろうか。

 佐賀県の場合は、住宅地と商業地、いずれも5年連続で下落幅が縮小した。注目すべきは、商業地で佐賀、鳥栖の2市がようやく上昇に転じたという点だ。市町単位でプラスが出たのは実に20年ぶりであり、ようやく底入れの兆しが見えてきた。

 だが、まだまだ楽観はできない。全体で見れば、住宅地は19年連続、商業地は25年連続で下がり続けているからだ。

 加えて、新たな不安材料が出てきた。佐賀市駅前中央の西友佐賀店の閉店である。JR佐賀駅前という立地でもあり、周辺への影響は見通せない。佐賀市が店舗跡地を取得する検討に入ったようだが、閉店状態が長引けば、中心街の空洞化が進みかねない。急ぎ、新たなまちづくりのビジョンをまとめる必要があるだろう。

 地価と人口の動きには密接な関わりがある。いかに人口流出を食い止めるかは喫緊の課題だ。

 有識者らでつくる民間研究機関「日本創成会議」が、2025年には東京エリアの医療・介護の介護需要が増大し、深刻な人材不足に陥るという試算を公表している。このままでは、介護や医療現場の人材が80万~90万人足りなくなり、若い世代の東京への人口流入に拍車がかかる。

 同会議は高齢者を地方へ移住させて人口のバランスを保とうと提言していたが、いかに東京一極集中を食い止めるかという問題意識はまったく同感だ。これからを担う若い世代が住み続けられる「選ばれる地方」を目指す必要がある。(古賀史生)

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