■100億円の基金案白紙に

 国営諫早湾干拓事業を巡る開門差し止め訴訟で長崎地裁(松葉佐隆之裁判長)は27日、和解協議の打ち切りを決めた。国が開門しない前提で示した総額100億円の漁業振興の基金案は実施されなくなった。開門派の漁業者側と開門阻止派の営農者側、国の三者の話し合いは約1年2カ月で不調に終わり、決裂した。4月17日に判決を言い渡す。

 和解協議は非公開。開門の議論と基金案との並行協議の提案に対し、漁業者側と営農者側で賛否は分かれ、国は基金案による協議継続を求める回答書を提出、地裁は和解は困難と判断した。基金案に絡んで国が漁業団体幹部に組合員を説得するための想定問答を示した問題の言及はなかったという。

 漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は「開門しない前提だけでなく、開門に関しても全力を尽くすべきだった。非常に残念」と述べ、国の姿勢や地裁の訴訟指揮に疑問を投げ掛けた。和解協議以外に解決の道はないと強調し「その機会をつくっていきたい」と語った。

 地裁は既に仮処分決定で開門差し止めを認めている。営農者側の山下俊夫弁護団長は「基金案が成立しなかったのは残念。開門を認めない判決が想定され、今後その司法判断が定着していくだろう」と話した。

 和解協議は昨年1月に地裁の和解勧告を受け始まり、国側は基金案を提示したものの漁業者側が認めず、基金の運営を担う有明海沿岸4県と各漁業団体では佐賀が拒否し、他の3県は受け入れていた。

 国が確定判決に従わずに開門するまで漁業者側に支払っている「間接強制」の制裁金は10日現在、7億6500万円となっている。

=解説= 議論尽くされず

 これからが話し合いの本番ではなかったのか。27日に打ち切られた国営諫早湾干拓事業の開門問題を巡る長崎地裁の和解協議。国、漁業者側、営農者側が望んで同じテーブルにつき、長年の懸案を解決する絶好の機会だったが、議論が尽くされたとは言い難い。

 和解協議の前提として、多数の裁判が提起される中で、国は開門と開門差し止めの相反する義務を負い、判決で白黒をつけても三者が納得できる解決はない、という当事者間の共通認識がある。同床異夢にはなるが、話し合いを続けることが肝要だったはずだ。

 和解協議は、ほぼ開門しない前提の議論ばかりだった。最終盤で地裁は漁業者側が求めた開門を含む議論との並行協議を提案はしたが、営農者側はすぐに拒否した。中立の立場であるはずの国もこの日の回答で開門しない案での協議継続を望み、開門に「後ろ向き」な姿勢をより鮮明にした。

 議論の余地がある中で打ち切られたが、問題点を一定整理できた成果もある。今回の議論をベースに、漁業者側、営農者側双方が納得のいく解決に向け、予算と政策を握る国が主導して話し合いの場を探る努力を続けるべきだろう。

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