和解協議の決裂を受け、「長崎地裁は解決に向けた積極的な努力をしなかった」と語る馬奈木昭雄弁護団長(右)=長崎市の長崎地裁前

会見で、今後の展望を説明する開門阻止派の弁護団の山下俊夫団長(左)と西村広平事務局長=長崎市

「和解に至らなかったのは大変残念」と語る農水省農地資源課の横井績課長(右)=長崎市

 国営諫早湾干拓事業を巡る長崎地裁の和解協議が決裂した27日、開門を求める漁業者側からは「不公平だ」と落胆と憤りの声が漏れた。1年2カ月、計15回に及んだ協議。当初から求めていた「開門」の議論はかなわず、開門しない前提の基金案の議論に終始したまま、話し合いのテーブルは消えた。

 「国は開門しないことには最大限の努力を尽くしてきたが、開門には何の提案もせず、阻止派を盾に取って和解を成立させようとしなかった」。開門派の馬奈木昭雄弁護団長は協議後、国に和解決裂の基本的な原因があると断じた。

 地裁が阻止派に対し、開門の議論も検討するよう打診してからわずか1カ月での決定。基金案と開門の並行議論に期待を寄せていた漁業者の大鋸武浩さん(47)=藤津郡太良町=は「地裁の訴訟指揮は不公平。こちらの案に対する営農者側の意見を聞いてみたかった」と残念がった。

 一方、開門阻止派の営農者側は会見で、「和解協議では漁業者側が基金案を一方的に批判するだけで、より良くする建設的な意見を出さなかったのが打ち切りの原因だ」と非難。開門に伴う多額の対策費用を有明海の環境改善事業に用いた方が有効として基金案の意義を主張する。山下俊夫弁護団長は「開門の議論を考えていた漁業者側とは協議の出発点が違っていた。和解による解決が妥当だったが、残念ながら成立に至らなかった」と述べた。

 農水省農地資源課の横井績課長も会見で「長きにわたりいろいろな検討を重ねてきたが、和解に至らなかったのは大変残念」と繰り返した。

 協議決裂の結果に、佐賀県の山口祥義知事は「開門に関する議論を排除せず、フラットな立場で話し合っていただきたいと思っていたので、和解協議打ち切りという判断がなされたことに違和感がある」とコメント。漁業者の気持ちに寄り添い、環境変化の原因究明と水産振興を国に求めていく姿勢を強調した。

 県有明海漁協の徳永重昭組合長は「当初から漁業者も納得できる和解を探るべきだった。残念だ」と率直な胸の内を明かした。その上で「司法の場とは別に、福岡、熊本と3県で有明海再生の議論を早急に再開したい」と今後を見据えた。

=長崎地裁の和解協議を巡る経緯=

2010年12月 国に開門を命じた08年の佐賀地裁判決を、福岡高裁が支持。国が上告せず確定

13年11月 長崎地裁が開門差し止めを命じる仮処分決定

16年

1月18日 営農者が開門差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁が、開門しない前提で開門派の漁業者側に解決金を支払うなどとする和解を勧告

5月23日 国が、開門に代わる漁業環境改善案として有明海振興基金(仮称)の創設を提案

11月30日 国が、基金の規模を100億円とする最終案を長崎地裁に提出

17年

1月17日 基金案について、佐賀県と佐賀県有明海漁協が拒否し、他の3県と各漁協団体は賛成したことを国が長崎地裁に報告

1月27日 長崎地裁が、基金案に国側の制裁金などを組み入れる形での和解を改めて勧告

2月7日 開門派の漁業者側が和解勧告の拒否を表明

2月25日 長崎地裁が営農者側に対し、和解勧告と並行して開門を含めた議論の是非を検討するよう指示。営農者側は即日拒否

3月7日 漁業者側は、長崎地裁の開門を含む提案を受け入れる意見書を提出

3月27日 長崎地裁が和解協議打ち切り。4月17日に判決

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