家族、従業員が役割分担し、多角経営する「フェルマ木須」の女性スタッフ。左から川原さゆりさん、善斉洋子さん、木須旬子さん、木須貴子さん、前山千春さん=伊万里市木須町

■多角経営の家族支える

 「けんかはエネルギーになる。よかよか」。家族、従業員12人がそろって手作りの弁当を食べる昼食の風景はいつもにぎやかだ。特別栽培米やもち麦、米麦を約40ヘクタールで大規模栽培・直売し、ギョーザなどの加工品製造やキュウリ栽培、農家民泊の運営と多角経営を展開する伊万里市の「フェルマ木須」。一家の頼れる母・木須旬子さん(63)の笑みは絶えない。

 旬子さんは34年前、結婚を機に農業の道に入った。当時は施設キュウリも重労働で、朝市に間に合わせるために早朝に収穫し、車で眠りながら夜明けを待つことも。子育ては義母に任せきりだった。

 働き詰めの日々で農業の厳しい一面ばかりを見せてきたはずだが、長男栄作さん(37)と次男友寛さん(34)は旬子さん夫妻の背中を追うように就農。栄作さんは3年ほど前にフェルマ木須の代表となり、友寛さんと共に新進気鋭の農業者として知られる存在になった。

 7年前、名古屋から夫と帰郷した長女の善斉洋子さん(38)も、経営に欠かせない一人。アルバイト時代の経験を生かし、洋子さん夫妻が手掛けた地元産野菜と伊万里牛のギョーザは、フェルマ木須を代表する農産加工品になった。

 古民家風ゲストハウスでの民泊や窯焼きピザ作りなどのグリーンツーリズムにも積極的に取り組み、「ここでしかできないことを見つけた気がする」。充実した笑みを見せる娘夫妻を、旬子さんは温かく見守る。

 一線を退いた旬子さんの今の役割は、経営を支える子どもたちや従業員の「後方支援」。長男の嫁貴子さん(41)に弁当の調理を依頼して見直した食事がその一つだ。

 農作業のわずかな合間にとる子どもたちの食事は、出来合いのコンビニ弁当やカップ麺。「食に携わる者として、このままじゃいけないと思って」と旬子さん。自家製のもち麦入りのご飯や野菜を使い、健康に配慮した貴子さんの弁当を囲む時間は、12人の貴重なコミュニケーションの場にもなっている。

 5人の孫と向き合う“孫守り”も旬子さんの大事な仕事。「家族で助け合うのが農家本来の姿。みんなが心置きなく働けるよう、便利で使い勝手のいい母ちゃんでいないとね」。母親としてわが子にしてあげられなかったという思いも込めて、たっぷりの愛情を注いでいる。

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