1980年代、米国の自動車工場の労働者がハンマーで日本車を打ち壊す映像がテレビで繰り返し流れたことがある。日本車の輸出が急拡大し、米自動車メーカーは業績が悪化。貿易摩擦の象徴的な出来事だった◆その頃、ニューヨーク・タイムズは社説で「昨年日本車を買った190万の米国人は、天皇ヒロヒトが好きだからそうしたのではなくて、日本の自動車が気に入ったからそうしたのだ」と書いている。日本車の燃費が良いから売れることを分かっていたのである◆トランプ大統領が日米間の貿易を「不公平だ」と批判して、日本が戸惑いを隠せないでいる。米国で日本車が売れる一方、米国車の日本販売が低迷しているからだ。まるでかつての悪夢がよぎるような様相である。しかし、今は日系の米国生産は進んでいるし、何より日本は輸入車に関税を課していない◆ドイツなど欧州の車は日本で売れている。米国車は燃費で引けをとり、車体が大きく右ハンドル車もないのなら、日本の消費者も二の足を踏む。努力不足を棚に上げられても、という心境になる◆80年代は結局、日本による輸出の自主規制に発展した。そのことで米国メーカーは効率的な経営体質にとうとう変われなかった。今回のような発言が、米国の自動車産業の真の助けになるとはどうしても思えないのだが。(章)

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