かつて、永田町には「一内閣一仕事」という言葉があった。吉田茂は戦後の主権回復に力を尽くし、佐藤栄作は沖縄返還を、田中角栄ならば日中国交正常化を実現させた。それぞれが歴史に刻んだ“一仕事”が思い浮かぶ◆「かつて」と書き出したのは、安倍晋三首相には当てはまらないように思えるからだ。在任期間がきょうで1981日になり、小泉純一郎氏を抜いて、戦後3位の長期政権に躍り出た◆いまだ高い支持率を誇り、めぼしいライバルは見当たらない。足かせだった党総裁の任期も延長し、このまま3期9年を務めれば、戦後1位の佐藤栄作だけでなく、歴代最長の桂太郎まで超える。まさに「安倍1強」時代が続く◆「アベノミクス」を掲げて再登板し、集団的自衛権の行使に道を開き、いよいよ憲法改正に手をつける構えだが、加計(かけ)学園問題で風向きが怪しい。「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」と内閣府による圧力を記した文書を、文科省の前事務次官が「本物だ」と告発した◆最も重要な政治課題を「一丁目一番地」と呼ぶが、永田町のその番地には「憲政記念館」が建っている。憲政史に名を残す政治家たちの足跡がとどめられており、まさに“一丁目一番地の殿堂”である。安倍首相は政治的レガシー(遺産)を手にして殿堂入りか、それとも…。(史)

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