■ケアと自己管理不可欠

 最近、日本人大学生の海外留学で悲しい事件が報道されている。特に女子大学生が男女関係のもつれなどを契機に、深刻な状況に発展しているようである。トラブルの詳細は不明であるが、概して平和で治安がよい日本で育ったわれわれは、海外生活にあこがれを抱く一方で、リスクが高いのも事実である。

 このような現状で、医療的視点からも一人ではなく、何人かで行動する(暮らす)ことが重要である。もし何か一大事になった場合、誰かに助けを求めることができるからだ。そこで、留学に際して、どのような準備や対策が行われているか、佐賀大学を例に取り上げてみよう。

 一般に海外留学は、短期留学と長期留学に大別される。短期留学は国際交流推進センターが実施する「佐賀大学短期海外研修プログラム(SUSAP)」や各部局で実施するスタディーツアー、文科省のプログラムなどが利用されている。長期留学は海外協定校への交換留学が主である。

 協定校は条件を定めていない大学もあるが、現地で暮らす上で必要とされる最低限の語学能力がない限り、佐賀大学からの推薦は行われない。重要なことは、派遣に際してのケアである。国際交流推進センターの短期プログラムと交換留学は、渡航前に「数回の事前研修」が実施されている。知識や準備のためだけではなく、プログラムの参加者同士、または同じ時期に世界中へ派遣される仲間たちの「横のつながり」をつくることで、留学中に相談や協力し合えるような関係づくりを促す目的がある。また、出発間際にはセンターが包括契約をしている旅行会社(全員に海外旅行保険への加入を義務付け)による「危機管理オリエンテーション」も実施される。

 留学の大切な条件として、危機を察知する能力および自己管理能力が問われる。日本人大学生が海外に留学する場合、個人で行動するよりも、数人が一緒に行動できるようなチームをつくり、お互いの情報交換を行いながら、寮やルームシェアしながら生活することが望ましい。どんな非常事態が生じても、すぐに助けを求められる環境づくりは、医療の場でも同様である。

(佐賀大学保健管理センター長・産業医 佐藤武)

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