2016年を振り返ると、私たちの価値観や常識が大きく揺さぶられた1年ではなかったか。とりわけ「熊本地震」は、九州では大地震は起きないという根拠のない思い込みをあっけなく打ち砕いた。

 熊本地震は、最初の地震から揺れが小さくなる「本震-余震」型ではなく、「前震-本震」型で、震度7の強い揺れが2回も襲った。これは、観測史上初めての経験であり、前震はどうにか持ちこたえた住宅が本震で崩れてしまい、その下敷きになった被災者も少なくなかった。

 復興は道半ばだ。いまだに熊本城は無残な姿をさらし、阿蘇周辺では交通網が分断されたままである。倒壊した住宅が放置されている地域もある。風化させず、息長く支援していかねばならない。

 その大きな揺れは佐賀県内にも及び、最大震度5強を記録した。

 今年は熊本だけでなく、列島各地が災害に見舞われた。台風10号が東北の太平洋側から上陸し、岩手県では高齢者福祉施設の入居者が犠牲になった。新潟県糸魚川市の大火では、多くの市民が焼け出された。

 そして、茨城県では震度6弱の強い地震まで起きた。東日本大震災から5年以上がたっても、これは震災の余震なのだという。

 もはや、いつどこで大規模災害が起きてもおかしくはない。いかに災害に備えるか。私たち一人一人が防災意識を高めて命を守る行動を身につける必要があるのだと痛感させられる。

 福岡市で起きた道路大規模陥没事故にしても、大都市の真ん中にぽっかりと穴が空いた光景は衝撃だった。その後の修復のスピードに「日本の底力を示した」と賞賛もあったが、これから先のインフラ整備・維持の在り方を見直すきっかけとすべきだろう。

 凄惨な事件や事故も相次いだ。相模原市の障害者福祉施設では、元職員の男が「障害者は生きていても仕方がない」と凶行に走った。高齢ドライバーによる事故の多発は、私たちの社会が超高齢化に追いついていない実態を浮き彫りにした。

 ご高齢を理由に天皇陛下が示された「退位」のご意向は、多くの国民が驚きをもって受け止めた。退位に向けた議論が進むが、将来の皇室の在り方も合わせて考えておく必要があるだろう。

 終戦から70年以上が過ぎ、戦後にけじめを付ける動きもあった。米国のオバマ大統領が現職の大統領として初めて被爆地・広島を訪問し、呼応するように安倍晋三首相が真珠湾で花を手向けた。

 かつての戦勝国と敗戦国がともに死者を悼み、「和解」を世界に示す。価値観の違いなどで分断され、テロが広がる現状を踏まえれば、負の連鎖を断ち切ろうというメッセージには意味がある。

 18歳選挙権もスタートした。都知事選では、自民党から公認が得られずに出馬した小池百合子氏が既存政党を破り、“小池劇場”で有権者の関心を引きつけた。

 ブラジル・リオ五輪では日本勢が躍動し、2020年東京五輪のカウントダウンも始まった。東日本大震災から復興した姿を世界に示す。そのためにも、いかに安全・安心を高め、災害に強い国をつくるか。新たな年がその第一歩となるよう願いたい。(古賀史生)

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